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自殺遺族への賠償請求 重い負担減らす仕組みを

 新型コロナウイルス感染の収束が見通せない中、自殺の増加が懸念されている。防止策を講じるとともに、これまで見過ごされてきた遺族の経済的な負担にも目を向け、支援する必要がある。

 2006年に施行された自殺対策基本法は遺族らの名誉や生活に十分配慮するよう求めている。

 だが賃貸住宅で命を絶った場合に遺族が家主から多額の損害賠償を要求されるケースが目立つ。

 例えば部屋のリフォーム代に加え、新しい借り手が見つからないという理由で数年分の家賃を請求される。「おはらい料」を求められることもある。

 請求額が数百万円に上る場合も多い。だが、どこに相談していいか分からず、そのまま応じてしまう遺族が少なくない。

 肉親が自殺した人の精神的負担は計り知れない。そのうえ、経済面でも過重な負担を強いられれば、さらに追い詰められる。

 こうした状況を変えようと、弁護士の有志が10年に「自死遺族支援弁護団」を作り、活動を続けている。法的な知識の乏しい遺族の相談に乗り、家主との交渉や裁判を通じて、請求額を減額させてきた。しかし遺族と家主とのトラブルは依然として絶えない。

 自殺に対する長年の意識が影響している。自殺が社会から忌み嫌われるという理由から、不動産の価値が下がるという考えだ。

 そもそも「自分の意思で命を粗末にした行為」という偏見が背景にある。だが世界保健機関(WHO)によると、自殺した人のほとんどは何らかの精神障害の状態だったとされている。

 病死と区別し、家主が多額の賠償を求めるのは妥当なのか。裁判所も近年、遺族側に立った判断を示すようになってきたという。

 行政も遺族の相談窓口を設けたり、対応のガイドラインを作ったりすることが求められる。家主の経済的負担を減らすため、一定の家賃収入を補償する保険制度の充実も必要だ。

 自殺をめぐっては、生命保険の支払いが滞るなど、遺族に重い負担がかかるケースはほかにもある。改善すべき点は多い。

 遺族の心のケアはもちろん、経済的な負担を減らす仕組みを作らなければならない。

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