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コロナ禍をどう乗り切るか 人気旅館経営者が語る心構え

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石坂大輔さん=長野県山ノ内町平穏の小石屋旅館で2021年2月18日午前10時39分、錦織祐一撮影 拡大
石坂大輔さん=長野県山ノ内町平穏の小石屋旅館で2021年2月18日午前10時39分、錦織祐一撮影

 新型コロナウイルス禍は観光県の信州に大打撃を与えた。「ウィズコロナ」時代に、観光業界はどのような展開ができるのか。証券会社のトレーダーから渋温泉(長野県山ノ内町)の「小石屋旅館」経営に転身し、冬に温泉に入る「スノーモンキー」目当てのインバウンド(訪日外国人)に人気の宿にリニューアルした石坂大輔さん(40)に心構えを聞いた。【聞き手・錦織祐一】

 ――コロナ禍をどう乗り切りましたか。

 ◆昨年、1回目の緊急事態宣言が出る前の4月5日に休館しました。そのまま2カ月休みましたので売り上げはゼロに近かった。

 その後は、県が県民向けの旅行割引を出し、うちは旅行業を取ってますので他の旅館の予約受け付けを手伝って、例年の半分までは戻りました。「GoToトラベル」で一気に忙しくなり、申請の仕方がちょっと面倒なので他の旅館から事務処理を任されました。

 秋山郷(同県栄村)の旅館「雄川閣」を村振興公社から引き継ぎ2019年7月にリニューアルオープンしましたが、そちらが一気に忙しくなりました。小石屋旅館はインバウンドが7割と偏重だったので、逆に日本人しか行かないようなとがった観光地に秋山郷をしたいと思いましたが、会社の売り上げは過去最高になりました。

 ――そこに「第3波」が到来しました。

 ◆GoToが停止になり、今度はその逆回転で返金処理が大変でした。年末年始は予約が一気になくなり、空いたのを見計らった方に予約を頂いて埋まりましたが、例年とは比較になりませんでした。今年に入ってからは、思い切って平日は休館にしています。傷口を広げないために。

 ――対策は。

 ◆経営資源を極力休ませることと、コロナ関連でいろいろな補助金、助成金が出てますので極力利用することです。大きかったのは観光庁の、内外の観光客が安心して楽しめるよう、地域が一体となって新たな生活様式に沿った旅行スタイルに対応した着地整備を行う誘客多角化の実証事業です。国が全額出します。これに栄村のマタギ文化体験で公募したところ、特に首都圏の若者が参加してくれてとても評判がいいです。猟師もガイド料をもらえるので地元にもお金が落ちます。

 ――アイデア勝負の色彩が強いですね。

 ◆今は特にそうです。渋温泉ではおかみのブロマイドを出しました。これも県の補助金で作りました。旅館単体ではなく地域全体で取り組んだ方がインパクトが強く訴求力があります。もともと私のコンセプトは「地域にないものを補完する」でしたので、その延長線上です。

 ――温泉街の魅力は何と考えますか。

 ◆渋温泉で言えば「昭和レトロ」。昭和で時が止まっているのがいい。そして、人が面白い。私はいつも「無料で入れるテーマパーク」と言っています。一人一人がテーマパークのキャストのようなんです。長年おもてなしに取り組んできたプロ中のプロ。インターンシップに来る学生にも「おかみさんたちの動き方をよく見てみなさい」と言っています。コンビニやファミレスのマニュアルにはない温かさがあります。

渋温泉や秋山郷では雪山や温泉、狩猟などさまざまな体験が楽しめる=石坂さん提供 拡大
渋温泉や秋山郷では雪山や温泉、狩猟などさまざまな体験が楽しめる=石坂さん提供

 私は東京出身のよそ者ですが、地域に貢献しようとしてきたことを評価してもらい、本当に皆さんによくしてもらっています。

 ――「ウィズコロナ」時代の観光業の役割をどう考えますか。

 ◆原点に戻ればいいと思います。温泉街で言えば「湯治宿」。療養やストレス発散のための雰囲気作りですね。今、東京はピリピリしている。お客さんも電話で「今、そちらに行っても大丈夫なんですか?」と。そういった方が心身ともにリフレッシュできる場所作りをしていきたい。

 秋山郷は特にインターネットがとても速いんですよ。リモートワークには持ってこいです。昨年6月に相模女子大のゼミが丸ごと来ています。授業はずっとオンラインだったので、ならばいっそのことゼミごと秋山郷に移そうと。血流でストレスをチェックするスマートフォンのアプリによるとストレスはだいぶ軽減されたようで、そういう効果もあると思っています。

 また、首都圏の大学に通う学生が、オンライン授業になったのを機にずっとうちでインターンシップをすることになり、それが縁で入社することになった――という、コロナ禍だからこその事例も出てきています。

 ――「ウィズコロナ」時代に合ったサービスの提供ですね。

 ◆旅行の良さは、今までは宿や地域の人々との距離の近さでした。だがコロナ禍でそれができなくなってしまった。その中でどうおもてなしを表現するか、答えは出ません。

 ただ、働き方が変わってきているのは追い風です。地方に長期滞在できるようになった。今までは日本人の旅行は1泊2日が一般的でしたが、地域の魅力を体験するには時間が足りない。インバウンドはみんな長かったんです。スノーモンキーを見ることだけ決め、あとは1週間自由に行動するようなライフスタイル。日本人もそうなってくるのでは。

 そうして空いた時間に地域独特のコンテンツを楽しむ。ここにはそうしたアクティビティーがいくらでもあります。今までインバウンドの皆さんが楽しんできたスノーモンキー、スキー、温泉、狩猟体験など。首都圏へのアクセスもいいですし、信州の強みです。

いしざか・だいすけ

 東京都出身、明治大卒。証券会社でトレーダーを務めた後、モナコ国際大大学院修士課程を修了し、星野リゾート入社。廃業して競売に出されていた小石屋旅館(山ノ内町)を落札して独立し、カフェを併設するなどリノベーションして2015年8月に開業、温泉街全体でのネット予約の運営支援なども手掛ける。19年7月には秋山郷(栄村)の旅館「雄川閣」を開業した。

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 読者とともに新たな働き方を探る毎日新聞発のコミュニティー「Next Style Lab」と「毎日みらい創造ラボ」は25日正午から、オンラインイベント「地方移住、こんな働き方もあったのか!『移住×複業/起業/事業承継』#働くを考えるvol・5」を開催。石坂大輔さんらが登壇する。詳細と申し込みはチケット販売サイト「ピーティックス」(https://nextstyle07.peatix.com/)。

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