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オーケストラのススメ

音楽評論家の山田治生さんが、国内外のオーケストラの最新情報や鑑賞に役立つ豆知識などを紹介、演奏会に足を運びたくなるコラムです。

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オーケストラのススメ

~51~ 演奏会の長さや開演時間について

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東京フィルは通常2時間のところ、休憩を除く1時間に短縮して1月の定期公演を行った 撮影=三浦興一/提供=東京フィルハーモニー交響楽団
東京フィルは通常2時間のところ、休憩を除く1時間に短縮して1月の定期公演を行った 撮影=三浦興一/提供=東京フィルハーモニー交響楽団

山田治生

 1月7日、2度目の緊急事態宣言が1都3県に対して発出され、その後、大阪府や愛知県などにもその範囲が広がり、2月2日には宣言が延長された。演奏会関係では、「午後8時以降の不要不急の外出の自粛の徹底」の要請により、午後8時までの終演が望ましいとされるようになった。それでも、宣言の適用日より以前から販売されていた公演については対象外(午後8時以後の終演を許容)となった。

 それを受けて、NHK交響楽団や東京都交響楽団は、2月の平日夜7時からの演奏会の開演時間を午後6時に繰り上げた。東京フィルは1月の定期演奏会で途中休憩を取りやめ、短めのプログラムで1時間に収めた。新国立劇場は、2月9日の「フィガロの結婚」公演を午後6時30分開演から午後4時30分開演に早め、終演を午後8時とした。

 緊急事態宣言とそれへの対応についてはさまざまな意見があると思うが、ここで私が述べたいのは、コロナ禍により、望むと望まざるとにかかわらず、演奏会の在り方自体(特に開演時間や演奏会の長さ)に再考がうながされているということについてである。

 まずは演奏会の長さについて。オーケストラの演奏会は、休憩を入れて2時間程度がスタンダードとなっている。しかし、コロナ禍が始まって、休憩時間の会話や飲食が感染拡大につながるとして、演奏会に途中休憩を入れないものが増えた。つまり休憩なしで60~70分程度の演奏会である。休憩時間の友人との談笑や知人との社交は演奏会の楽しみの一つであるが、私個人としては、休憩なしで演奏会自体の長さが短い方がうれしい。この休憩なし1時間程度のスタイルは、2時間のフル・コースとともに、コロナ後も残してほしいと思う。オーケストラにとっても、たとえば、1時間程度の演奏会を平日昼夜2公演で行うのは、効率がよいし、それぞれで違った客層に聴いてもらえてよいのではないだろうか。

 開演時間は、コロナ禍以前から、もっと柔軟に設定すればよいと思っていた。歌舞伎座が平日も午前10時30分や午前11時から公演を行っているくらいだから、クラシック音楽でも平日の午前や午後の需要はかなりあるだろう。

 コロナ禍が終息したら、開演は平日午後7時か休日午後2時、長さは2時間というような固定観念を離れて、もっと多様な演奏会を企画してほしい。

 欧米では午後8時開演の演奏会が多いが、日本でも、休憩なし1時間コンサートなら可能だし、その方が都合の良い人も多いに違いない。会社勤めの人も来やすいし、演奏会前に食事をとる人はゆっくりと食べて来られるし、終電も気にしなくてもよい。

 オーケストラではメンバーの都合で難しいかもしれないが、室内楽などで午後10時開演の演奏会があればいいと思う。聴衆は地元民中心となるだろうが、それを前提とすれば、問題ない。仕事も食事もすべて済ませてから1日の終わりにリラックスして音楽を楽しむ。そのようなコンサートが定期的にあれば、聴き手もうれしいし、新たな客層が広がるに違いない。

筆者プロフィル

 山田 治生(やまだ はるお) 音楽評論家。1964年、京都市生まれ。87年、慶応義塾大学経済学部卒業。90年から音楽に関する執筆を行っている。著書に、小澤征爾の評伝である「音楽の旅人」「トスカニーニ」「いまどきのクラシック音楽の愉しみ方」、編著書に「オペラガイド130選」「戦後のオペラ」「バロック・オペラ」などがある。

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