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香山リカのココロの万華鏡

精神科医の香山リカさんのコラム。06年から続く長寿連載。診察室から、現代人の“心の病”についての洞察します。

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香山リカのココロの万華鏡

入試もいつか思い出に /東京

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 大学の教員もやっている私にとって、2月半ばは入学試験のシーズンだ。毎年、期間中に何回か監督業務にあたるが、「失敗があってはならない」といつも緊張する。「個人的な感情は消してきちんと業務をこなそう」と思うのだが、今年はちょっとだけ違った。

 ある日の「国語」の時間、問題用紙や解答用紙を配り終え、写真照合ですべての受験生が本人であることを確認し、開始のチャイムが鳴ってほっとひといき。受験生から質問が出たときにすぐに応じられるよう、手もとに用意してある問題用紙をめくった私は「あっ」と声を上げそうになった。古典の問題文として、鎌倉時代に御所で育った二条という女性が書いた「とはずがたり」の一部が使われていたのだ。

 著者の体験記といわれるが、これはすごい話なのだ。御所で育ち、後深草院(ごふかくさいん)の寵愛(ちょうあい)を受けた二条は、ほかの男性たちからの求愛も受け入れる。しかし、華やかな日々はすぎて御所を出され、30代で尼僧となって諸国をさすらい、修行の日々を送ることになる。

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