放送行政を巡る癒着ぶりと規範意識の低さにあきれる。
総務省幹部らが放送事業会社「東北新社」に勤める菅義偉首相の長男らの接待を受けていた問題で、幹部ら計13人が延べ39回会食していたことが明らかになった。同省が内部調査結果を公表した。
既に認めていた4人に加え、放送行政の担当局を中心に課長ら8人が会食していた。このほか、同省総務審議官を務めていた山田真貴子内閣広報官も参加していた。
国家公務員倫理規程は、利害関係者から接待を受けたり、金品を受けたりする行為を禁じている。
首相は国会で、「長男が関係し、結果として公務員が倫理規程に違反する行為をしたことは心からおわび申し上げる」と陳謝した。
武田良太総務相は近く幹部らを処分するという。だが、それで幕引きとすることは許されない。
倫理規程違反だけでなく、行政の公正性がゆがめられていないかを解明する必要がある。衛星放送番組の認定などで特別扱いがあれば、贈収賄の疑いも出てくる。
しかし、総務相は調査終了前の先週、「ゆがめられたことは全くない」と断言した。問題はないという結論ありきの対応にみえる。
疑惑が浮上した際、完全に否定することで批判をかわそうというのが、安倍前政権からの常とう手段だ。異論や反対意見をあげにくくなり、疑惑に蓋(ふた)をすることにつながりかねない。
総務相は、包み隠さず調査に協力するよう職員に指示したという。しかし、国会での質問に対して幹部が虚偽答弁をしていたことも明らかになっている。
同省幹部は、首相の長男がいたから会食したわけではないというが、なぜ同社の接待にだけ繰り返し応じたのかの説明はない。
首相はかつて総務相を務め、強い影響力を保っている。首相へのそんたくがはびこっているのではないか。にもかかわらず、首相は主体的に実態を解明しようという姿勢を示していない。
内部調査では限界がある。客観性を持たせるため、第三者委員会で調査させる必要がある。
首相は、長男の国会招致や同省幹部の証人喚問に応じるよう与党に指示すべきだ。首相には疑惑の徹底解明を図る責任がある。
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