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東日本大震災と東京電力福島第1原発事故で一時、全町避難した福島県楢葉町で、かつての街並みを復元したジオラマが、同町北田の交流施設「ならはCANvas(キャンバス)」で展示されている。JR常磐線竜田駅西口に広がる住宅街で、避難指示が解除された今も建物が解体されたままの更地が目立つが、模型の建物には思い出の一言メッセージがたくさん添えられ、にぎやかだった町の息吹がよみがえっている。【柿沼秀行】
「生まれ育った古里がいいね」
「炭鉱のトロッコが走っていた」「戦時中、駅前に集まって学校の開校を確認」「集団就職列車に/中卒で東京へ」。小さな模型の建物の一個一個に、思い出のエピソードを書いた紙がびっしりとピンで留められている。「ざっと100人以上には聞いたでしょうね」。近くの住民らでつくる「竜田駅西口を考える会」代表の小野治久さん(65)が振り返った。
竜田駅は2020年に新駅舎が完成し、旧駅舎は同年12月に取り壊された。「寂しいよね」。小野さんらと、震災ボランティアなどを機に町に関わり続けている若者たちが話をする中、形にして残そうと企画したのがジオラマ作成だった。住宅地図を基に駅西口の東西約1キロ、南北約500メートルの範囲を1000分の1の縮尺で再現した。
建物は発泡スチロールで形を整え、かつての街並みに加え、19年に完成した屋内体育施設「ならはスカイアリーナ」など新しい施設も混在させた。これを取り壊される前の旧竜田駅舎で展示し、訪れる人たちに「何か思い出はありますか」と聞きながら、メッセージを書いていく作業を続けた。
聞き取りを手伝った東北芸術工科大(山形市)3年の日野涼音(りょう)さん(21)は「既にない建物の思い出が聞けたりして、一緒にタイムスリップしているようで楽しかった」と振り返る。
原発事故で町は一時、全町避難し、15年9月に避難指示が解除された。小野さんはいわき市に避難し、解除後に妻と2人で戻ったが、隣近所は今も更地だ。それでもうれしそうに自宅の模型を見つめ「生まれ育った古里がいいね」と話す。ジオラマは3月いっぱい、ならはキャンバスで展示中。小野さんは「まだ完成形ではなく、思い出をさらに追加してほしい」と話している。
未来へ、心こもった作品
ならはキャンバスではジオラマの他にも、町民手作りの絵手紙や切り絵、藍染め、つるしびななどが展示されている。震災から10年を迎えるのを機に町が主催するイベント「3・11CANvasに描く! 未来へ つなぐ」で、3月いっぱい展示する。
震災前から続くグループや、震災後にできたグループなど町民団体による心のこもった作品がずらりと並ぶ。また、町民に呼びかけて集めた写真展「楢葉町の震災の記憶を、これからにつなぐプロジェクト」も開催中だ。
さらに週替わりのワークショップもある。オリジナルキャンドル作りや塗り絵の体験(3月6日)▽藍染めや絵手紙体験(同13日)――など。またプロのピアノ演奏も(28日=熊田桂子さん▽3月6日=角田啓子さん▽同13日=富山律子さん)。
担当する一般社団法人「ならはみらい」の牧ノ原沙友里さんは「大切な思いが詰まった作品ばかり。時間をかけてじっくり見てほしい」と話している。問い合わせは「ならはみらい」(0240・23・6771)へ。
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