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毎日新聞朝刊1面の看板コラム「余録」。▲で段落を区切り、日々の出来事・ニュースを多彩に切り取ります。

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日本民俗学の礎を築いた学者…

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 日本民俗学の礎を築いた学者、折口信夫(おりくち・しのぶ)は「まれびと」論の提唱者として知られる。はるかかなたから人々に幸運を授けるためにやってくる、来訪神のことだ。「よそもの」を排除せず、迎え入れる素地が日本の共同体にはあるのかもしれない▲全国で活躍する「地域おこし協力隊」は、現在のまれびとだろうか。若者らが地方に移り住み、まちづくりに協力する制度だ。2009年のスタート以来約5000人が各地に派遣され、約6割が定住した▲コロナ下、隊員たちは健闘している。静岡県沼津市では、兵庫県出身の青山沙織さん(39)が地元でとれる深海魚の箱づめ販売を考案した。深海魚をテーマにしたイベントがコロナのあおりでできなくなり、漁業関係者支援に思いついた。研究家らから引き合いがあり、すでに250箱以上を出荷した▲福井市の協力隊員、松平裕子さん(46)は山間地域のオンライン診療を実現した。お年寄りが近くの福祉施設に出向き、画像を通じて病院診療を受けられるようにした。東京都から移住し、外資系勤務の経験もある松平さんは「オンライン在宅診療も実現したい」と意気込む▲コロナ禍は協力隊にも影を投げかけている。とりわけ観光関連の試みに逆風が吹き、隊員が途方に暮れてしまうケースもあるようだ▲魅力あるコンセプトを示して隊員を募集した自治体に若者の応募が集中しやすいのも最近の傾向だという。まれびとを生かせるかどうかも地方の工夫と熱意次第という、協力隊事情である。

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