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東日本大震災

2011年3月11日に発生した東日本大震災。復興の様子や課題、人々の移ろいを取り上げます。

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福島在住の柳美里さん「内視鏡になって心の中を描きたい」

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受賞を知り、「地元のお年寄りががっかりしないことにほっとした」と話す柳美里さん=東京都内で、明珍美紀撮影
受賞を知り、「地元のお年寄りががっかりしないことにほっとした」と話す柳美里さん=東京都内で、明珍美紀撮影

 東日本大震災から10年の節目を前に、福島県南相馬市に移住した作家の柳美里さん(52)が、米国で権威のある全米図書賞(翻訳文学部門)を受賞した。受賞作の「JR上野駅公園口」は南相馬出身の男性が主人公。住民との対話から着想を得た物語で、地元のお年寄りが「おらほ(私たち)の物語」と言って祝福したという。震災と原発事故。そして現在、新型コロナウイルス禍に見舞われる福島の現状を柳さんはどう見ているのか。【明珍美紀】

 ――震災からもうすぐ10年になりますが、その前の2月13日夜、福島など東北や関東地方を大きな地震が襲いました。震度6弱を観測したお住まいの南相馬市の近辺はどのような現状でしょうか。

 ◆発生直後の様子をSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)に投稿しましたが、自宅は家具が倒壊し、運営しているブックカフェ(「フルハウス」)の本が散乱しました。本だけでなく植木や食器など大事なものが壊れて、どう片付けていいか途方に暮れました。

 近隣には老夫婦で、あるいは独りで暮らしているお年寄りがいるので、その方々がどうなっているか心配でなりません。

 ――新型コロナウイルス禍も続いています。

 ◆感染拡大は全国的な問題とはいえ南相馬は、2011年の震災に次いでロックダウンに近い状態が2度目。震災時は老若男女、学校でも電車の中でもマスクをしていたし、外に出ないように暮らしていました。

 私が暮らす南相馬市の小高区は原発事故によって全域が「警戒区域」に指定された場所です。

 震災前とは全く異なる、か細いつながりの中で生きてきたのが、コロナウイルスでさらに「人との接触が危険だ」といわれているので、より深刻です。小高では、5000人の規模の町を目指そうという意気込みがあったのに、それが難しくなりました。また、復興という言葉が目指すものが何なのか見えづらくなってきました。

 1月半ばに、地元の社会福祉協議会に勤める友人に聞いたのですが、どんな人が相談に訪れたかというと、例えば、九州から働きに来た作業員は、雇い止めになり、寮から追い出され、食べるものもない。「どこで寝ているのか」と聞くと、…

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