- ツイート
- みんなのツイートを見る
- シェア
- ブックマーク
- 保存
- メール
- リンク
- 印刷

東日本大震災から10年の節目を前に、福島県南相馬市に移住した作家の柳美里さん(52)が、米国で権威のある全米図書賞(翻訳文学部門)を受賞した。受賞作の「JR上野駅公園口」は南相馬出身の男性が主人公。住民との対話から着想を得た物語で、地元のお年寄りが「おらほ(私たち)の物語」と言って祝福したという。震災と原発事故。そして現在、新型コロナウイルス禍に見舞われる福島の現状を柳さんはどう見ているのか。【明珍美紀】
――震災からもうすぐ10年になりますが、その前の2月13日夜、福島など東北や関東地方を大きな地震が襲いました。震度6弱を観測したお住まいの南相馬市の近辺はどのような現状でしょうか。
◆発生直後の様子をSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)に投稿しましたが、自宅は家具が倒壊し、運営しているブックカフェ(「フルハウス」)の本が散乱しました。本だけでなく植木や食器など大事なものが壊れて、どう片付けていいか途方に暮れました。
近隣には老夫婦で、あるいは独りで暮らしているお年寄りがいるので、その方々がどうなっているか心配でなりません。
――新型コロナウイルス禍も続いています。
◆感染拡大は全国的な問題とはいえ南相馬は、2011年の震災に次いでロックダウンに近い状態が2度目。震災時は老若男女、学校でも電車の中でもマスクをしていたし、外に出ないように暮らしていました。
私が暮らす南相馬市の小高区は原発事故によって全域が「警戒区域」に指定された場所です。
震災前とは全く異なる、か細いつながりの中で生きてきたのが、コロナウイルスでさらに「人との接触が危険だ」といわれているので、より深刻です。小高では、5000人の規模の町を目指そうという意気込みがあったのに、それが難しくなりました。また、復興という言葉が目指すものが何なのか見えづらくなってきました。
1月半ばに、地元の社会福祉協議会に勤める友人に聞いたのですが、どんな人が相談に訪れたかというと、例えば、九州から働きに来た作業員は、雇い止めになり、寮から追い出され、食べるものもない。「どこで寝ているのか」と聞くと、…
この記事は有料記事です。
残り4470文字(全文5364文字)
時系列で見る
-
「分かち合い」うたった復興事業 7原則の提言は生かされたか
945日前深掘り -
全国どこでも補助 被災地復興予算流用 8172億円返還されず
945日前スクープ -
津波が奪った父 「2人で見た景色」探すドン底からの再起の旅
945日前 -
マエストロ、広上淳一さんが子どもたちに卒業ソングを贈りたい訳
945日前 -
400トンの震災遺構を現状のまま移動 守りたい思いと職人技
945日前動画あり -
原発再稼働、幻のシナリオ 東電不信が再燃 東京に電気送る新潟
946日前深掘り -
津波に流された母がいれば ひきこもった娘、不安の根っこにある震災
946日前 -
原発事故10年「変わってない」 元国会事故調・野村氏のいらだち
946日前 -
津波で「家族めっちゃ崩れた」 父の死後風俗で働いた娘に差す陽光
947日前 -
福島在住の柳美里さん「内視鏡になって心の中を描きたい」
947日前 -
唯一の在校生の「なみえ博物館」 震災後8年の郷土学習まとめる
947日前 -
タイガー・ジェット・シンさんに日本政府表彰 震災被災児へ寄付
947日前 -
人気バンドMONKEY MAJIK 震災で「SEND愛」発信
947日前動画あり -
「全部なくなった」父失い、育児放棄の母急死 20歳、何支えに
948日前深掘り -
被災者の「心の声」耳傾け続けた僧侶、10年振り返る著書出版
948日前 -
「釜石の奇跡」体験高校生が小学生に授業「てんでんこに逃げて」
948日前 -
茨城・前東海村長、脱原発の訴え 「日本は変われなかった」
948日前 -
被災した教室 子供たちの失われた生活伝えたい さいたまで写真展
949日前 -
東北に触れる「きっかけ食堂」 「忘れていない」若者の強い思い
949日前