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この国はどこへ コロナの時代に 「孤独のグルメ」主演、俳優の松重豊さん 五郎スタイルで楽しんで

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コロナ禍の飲食業界にエールを送る、松重豊さん=2020年7月、髙橋勝視撮影
コロナ禍の飲食業界にエールを送る、松重豊さん=2020年7月、髙橋勝視撮影

食事はご褒美、明日への希望

 日本の食文化をこよなく愛し、コロナ禍で日々追い込まれる飲食業界の現状に心を痛める男がいる。人気ドラマ「孤独のグルメ」(テレビ東京系)の主人公・井之頭五郎を演じる俳優、松重豊さん(58)だ。

 五郎に自身を重ね合わせるようにして、松重さんはこんなふうに語り始めた。「コロナ禍の影響はこの先、まだまだ続くでしょう。このままでは世界に誇れる日本の食文化が消えてしまうのではないでしょうか」

 井之頭五郎が食べ歩いたのは、星が付くような高級店やどこにでもある全国チェーン店ではなく、定食屋やラーメン店、焼き肉店など人々の日常生活に溶け込んでいるような店だ。その多くは個人経営でアットホームな雰囲気。どこにでもありそうで、実はどこにもない店。松重さんが言う「日本の食文化」の風景がそれだ。五郎はそうした店の名物料理を頂く。シーズン1~8で五郎が巡った店は実に100軒以上。「『孤独のグルメ』は飲食業界の人たちにとても愛してもらっているドラマです。この番組をそんなおかみさん、大将たちへのエールにしたいと思い、演じてきました」。松重さんはそう言う。

 コロナ禍で世界が変わる前のこと。「孤独のグルメ」のスタッフ一同、東京オリンピックの開幕に向けて楽しい想像を膨らませていたという。「大勢の外国人観光客が日本滞在中に関心を持ってもらえるような、日本にある外国の郷土料理店を紹介するインターナショナル編を考えていました」

 そんな愉快な構想も、コロナ禍による五輪の延期決定で崩れた。感染が終息する見通しが立たない中、現在は緊急事態宣言が再発令され、全国の飲食店が苦境にあえぐ。東京商工リサーチの今月2日の発表によると、新型コロナウイルスに関連した全国の企業倒産件数が累計で1000件になったといい、業種別では飲食業が182件と最も多かった。2度目の緊急事態宣言により、経営環境はいっそう悪化しているはずだ。

 松重さんは「営業は午後8時まで」「1日6万円の時短協力金」などの対策に思うところがあるという。自宅の近所だけでも既に多数の飲食店がのれんを下ろしたといい、「駅前にあるような老舗店は特に厳しい。板前さんが2人、仲居さんが5、6人いるような店は食材の仕入れから人件費までランニングコストも高い。協力金で経営を維持するのは難しい。そうした店が消えて…

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