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科学や医療を巡るあらゆる出来事を永山悦子・医療プレミア編集長兼論説室が読み解きます。

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目隠し実験の理由=永山悦子

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ラットの大腸組織を使い、小腸の機能を再生させる実験に取り組む小林英司・慶応大特任教授(右)ら=小林特任教授提供
ラットの大腸組織を使い、小腸の機能を再生させる実験に取り組む小林英司・慶応大特任教授(右)ら=小林特任教授提供

 「断腸の思い」は、中国の古典「世説新語」におさめられた故事に由来する。ある武将の船に従者が子ザルを乗せると、母ザルが追いかけて飛び乗ってきた。しかし、母ザルは死んでしまう。調べると腸が断ち切れていた。このことから、腸がちぎれるほどのつらさや悲しみを「断腸の思い」と言うようになったとされる。

 腸は私たちの生命活動に欠かせない臓器だ。中でも、栄養の吸収に欠かせない小腸は、機能が失われると治療が難しい。現在、唯一の治療法は移植だが、拒絶反応が強く、生存率が低い。国内の実施例は30例ほど。人工的に小腸を作る再生医療も、構造が複雑なため不可能とされてきた。

 先月、慶応大などのチームが画期的な研究成果を発表した。ラットの大腸表面の細胞をはぎ取り、そこへ小腸の細胞から培養した細胞のかたまりを注入。小腸を切り取ったラットに、この「小腸化した大腸」を移植すると、栄養を吸収できるようになったのだ。

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