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ジョブ型の働き方 会社の都合優先せぬよう

 「ジョブ型」と呼ばれる雇用の導入を、経団連が春闘で呼びかけている。ポストごとに職務や必要な能力を具体的に示し、それに見合う人材を雇う欧米型の形態だ。

 高度な技術や能力を持った即戦力を採用しやすくなる。新型コロナウイルスの感染拡大で広がったテレワークとも相性が良い。

 ただし、従来の日本型雇用に大きな変更を迫る働き方でもある。導入に際しては、労使が納得いくまで議論しなければならない。

 ジョブ型では、仕事の内容は雇用契約で定められた職務に限定される。働き手が主体的にキャリアを形成し、専門性を磨けるメリットがある。

 一方で、ポストが不要になれば、働き手も必要なくなる。米国では解雇に直結する。正社員を採るより、業務の必要性に応じて有期契約で雇おうと考える企業も増えるだろう。

 このため労働団体は、雇用の不安定化を招くと懸念する。

 もちろん日本では、よほどの事情がない限り解雇はできない。ただ、経済界はかねて、労働市場の流動化に必要だという理由で、解雇規制の緩和を求めてきた。

 ジョブ型の普及を突破口に、働き手に不利な雇用ルールが導入されないか、注意が必要だ。非正規雇用が広がり、日本で格差問題が深刻になったのも、雇用規制が緩和された影響が大きい。

 成果主義とセットで議論されがちな点も気がかりだ。そもそもジョブ型の賃金は職務に応じて決まり、成果とは連動しない。

 日本企業では、1990年代に成果主義を採用する動きが広がったが、業績が伸び悩む中、賃金抑制の口実に使われたとの指摘もある。懸念はぬぐえない。

 終身雇用を保障する代わりに、異動や転勤を命じてさまざまな仕事を経験させるのが日本型の雇用だ。年功序列的な賃金や人事への批判がある一方で、社員の一体感や社内教育が高品質の源泉にもなってきた。そうした強みを失わないような目配りも求められる。

 経済界は、双方の利点を生かした形を模索するというが、会社に都合の良い部分だけつまみ食いされれば、働き手が不利益を被りかねない。最適な制度に向けて議論を深める必要がある。

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