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「万葉古道」を尋ねて

万葉の時代の暮らしを支えた「古道」。わずかな手掛かりを頼りにいにしえの道を尋ねます。

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交流・別れ・流浪/75 吉野/16 カジカガエル 他種と混同 /奈良

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岩の間を流れカジカガエルが鳴く瀬と淵をつくる吉野川=奈良県吉野町菜摘で
岩の間を流れカジカガエルが鳴く瀬と淵をつくる吉野川=奈良県吉野町菜摘で

 万葉歌が「カワヅ」と呼んだカジカガエルの名と扱いは、その後の歌集の中で揺れる。

 漢詩集「懐風藻」(751年成立)にはカワヅに触れた詩はない。中国の「詩経」にもカエルは出ない。中国では「蛙声(あせい)」に「みだりがわしい音楽」の意味もあった。カエルの種類は不明だが。懐風藻は中国書の扱いに倣ったのではないか。もっとも日本でも他のカエルの声はうるさがられる。

 平安~鎌倉時代に編集された勅撰(ちょくせん)和歌集「八大集」の最初の「古今集」(一説に905年編集開始)の仮名序は紀貫之作とみられる。「花に鳴く鶯(うぐいす)、水にすむかはづのこゑ(え)をきけば、生きとし生けるもの、いづれか歌をよまざりける」とカジカガエルの扱いは、万葉歌を引き継いだ。それが紀淑望(きのよしもち)の漢字序では、ウグイスは「花の中に囀(さえず)」るが、カワヅは「秋の蝉(せみ)の樹の…

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