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毎日新聞朝刊1面の看板コラム「余録」。▲で段落を区切り、日々の出来事・ニュースを多彩に切り取ります。

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「チャーピィーピラー?」は…

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 「チャーピィーピラー?」は、ビルマ語で「聞いた?」を意味する。ミャンマー軍政の情報統制が厳しかった昔、庶民はそれでも大臣と女優の情事や政権内のもめごと、物価の先行きなどを口コミでうわさした▲英米のラジオ放送の軍事政権批判、災害や事件報道がその情報源の一つだった。「ミャンマーを知るための60章」でテッテッヌティーさんは、子ども時代に大人たちがよく「チャーピィーピラー?」と情報交換していたと記している▲その後、ミャンマーも情報開国を経て、庶民の情報交換は口コミからSNS(ネット交流サービス)の時代を迎えた。「あれ聞いた?」との口コミも、素早く拡散するSNSも、総動員しての国軍のクーデターへの抵抗が続いている▲最大都市ヤンゴンなどの都市部では市民のデモ隊に治安部隊が発砲、1日で10人以上の死者が出た日もある。SNSには市民の犠牲者などの映像が流れる一方、公務員や労働者、医療従事者などの間に「不服従運動」が広がっている▲国連での反クーデター演説で解任されたミャンマーの国連大使は、3本指を立てたサインで抵抗の意思を示した。タイでも軍政への抗議の象徴となったこの3本指、もとは米映画「ハンガー・ゲーム」の反独裁のサインだったという▲軍政時代と異なり民主化を経験し、グローバルな経済・文化の浸透した今のミャンマーだ。武装せぬ国民に実弾を浴びせる非道は、あらゆる場で交わされる「チャーピィーピラー?」の渦に復(ふく)讐(しゅう)されよう。

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