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東日本大震災

2011年3月11日に発生した東日本大震災。復興の様子や課題、人々の移ろいを取り上げます。

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規制の虜は変われたのか 福島第1の国会事故調元委員長が問う

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東京電力福島第1原発事故から10年を前に思いを語る黒川清・東京大名誉教授=東京都港区で、藤井太郎撮影
東京電力福島第1原発事故から10年を前に思いを語る黒川清・東京大名誉教授=東京都港区で、藤井太郎撮影

 東京電力福島第1原発事故について調べた国会の事故調査委員会(国会事故調)は2012年に公表した報告書で、事故の背景には「規制の虜(とりこ)」と言われる現象があったと指摘した。委員長を務めた黒川清・東京大名誉教授の目には、国会の外側から見た今の日本がどう映っているのか。【聞き手・奥山智己/科学環境部】

「長期的なビジョンがない」

 ――福島第1の廃炉作業では、汚染処理水をどのように処分するかを決めるのに時間がかかっています。

 ◆原発の西側にある阿武隈(あぶくま)山系からの大量の地下水が毎日、建屋の中に流れ込んでおり燃料デブリ(溶け落ちた核燃料)を冷やす水と混じると汚染水になる。汚染水は、アルプス(ALPS、多核種除去設備)を使って処理水になるとタンクにたまる。海外の原発を見ても、放射性物質のトリチウムを含んだ水は、海や川に流されている。しかし、福島の処理水にはトリチウム以外の放射性物質も残っており、アルプスで濃度を国の基準より下げてもゼロにはできないから、世論の合意が難しくなっているのではないか。

 ――どうしたらよかったんでしょうか。

 ◆汚染水が生じる根元を何とかしないと、タンクにたまり続けることになるので、建屋に流れてくる地下水を止めるしかない。前に(江戸城の築城で知られる)太田道灌(どうかん)でも可能な技術があると政府に提言したことがある。つまり、建屋を含む敷地の周りを囲うように深い堀を造り、建屋に流入する地下水を遮断、迂回(うかい)させて海の方へ流れるようにすればいい。それが、今実施されている対策は凍土壁だ。建屋周辺の地中に、囲うようにして凍らせた土の壁を設けたので、常に電力が必要になる。多大な維持費もかかっているが、建屋への流入を防ぎきれていない。「今をどうしのぐか」という考えだけで、長期的なビジョンがなかったと言わざるを得ない。今からでもできるのか、しっかり検討してほしい。

 ――国会事故調の報告書では、原発事故の原因の背景に「規制の虜」というキーワードを使い、半世紀も続いた自民党の一党支配、年功序列や終身雇用といった官界と産業界の際立った組織構造、それを当然と考える国民の「思いこみ」があったと指摘しました。原発事故をきっかけに日本の変化を求めましたね。

 ◆汚染水もそうだが、何か問題があった時、…

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