米国のトランプ前政権が軽視した協調体制を立て直し、新型コロナウイルスで危機に陥った世界経済の復興につなげる必要がある。
バイデン米政権の発足後初めて日米中など主要20カ国・地域(G20)の財務相らが会議を開いた。
巨大IT企業への国際的な課税強化に向け、議論が前進したのは成果だ。トランプ前政権が反対して日欧と溝が深まっていたが、バイデン政権が方針転換した。
ネット通販などの活況でIT企業は巨額の利益を得ているが、税金は十分払っていない。課税を強化すれば、困窮した国民生活を支える財源に充てることができる。
コロナ禍で深刻化した格差を是正し、景気回復を後押しするものだ。早期に合意してほしい。
協調を再構築できるかは、これから試される。
最近、日米の株価が急落した。バイデン政権による200兆円もの財政出動計画が経済を過熱させ米国の金融引き締めを早める、との観測が市場に広がった。
不安定な相場は投資家や企業心理を冷やし、景気回復を妨げる恐れがある。G20は「経済は脆弱(ぜいじゃく)」と指摘し、財政出動や金融緩和を続ける方針で一致した。市場の観測を打ち消すのが狙いだろう。
ただ問題の根源は、大型経済対策によって大量の資金が市場に流れ込んだ「カネ余り相場」にある。景気の実態とかけ離れた株価だけに値動きも荒くなりやすい。
G20に求められるのは、世界経済全体の回復をリードすることだ。ワクチン接種が遅れる途上国への財政支援がカギを握る。
今回新たな策はまとまらなかった。中国の途上国向け融資が不透明で、支援しても中国への返済に回されると日米などが警戒した。
だからといって支援を滞らせてはならない。途上国で感染拡大が放置され、経済が立ち行かなくなると影響は世界に波及する。中国も懸念の払拭(ふっしょく)に努めるべきだ。
体制の違う国が集まるG20は合意が難しい。リーマン・ショックは米中が連携して乗り切ったが、中国の経済力が一段と強まり、米国との対立が激しくなっている。
だがコロナ禍はリーマン・ショック以来の深刻な不況だ。グローバルな危機の克服に向けて連携するのは主要国の責務である。