教科書に載ってない「ビキニ」 29歳監督が撮った男たちの苦悩

  • はてなブックマーク
  • メール
  • 印刷
ドキュメンタリー映画「その次の季節 高知県被曝者の肖像、遠洋漁業の記憶2020」のワンシーン。ビキニ水爆実験で被害に遭った元船員の男性は「魚を廃棄せないかんと聞いてほんまに泣きましたね」と語った=甫木元空さん提供
ドキュメンタリー映画「その次の季節 高知県被曝者の肖像、遠洋漁業の記憶2020」のワンシーン。ビキニ水爆実験で被害に遭った元船員の男性は「魚を廃棄せないかんと聞いてほんまに泣きましたね」と語った=甫木元空さん提供

 ナレーションも、字幕も、BGMもない。隣に住んでいるようなおじいちゃん、おばあちゃんが淡々と言葉をつないでいく――。1954年に米国が太平洋・ビキニ環礁付近で水爆実験を繰り返し、島民や漁船の乗組員が被ばくした「ビキニ事件」の異色のドキュメンタリー映画が完成した。監督し、自らカメラを回したのは、埼玉から高知に移り住んだ29歳の青年だ。事件から3月で67年。70分間の映像には、歴史の教科書に載っていない、高知の元船員や遺族の知られざる苦悩が記録されている。

 タイトルのバックに流れる波の音が、見る者を大海原へといざなう。「放射線含んどるから魚を廃棄せないかん。それ聞いただけで、ほんまに泣きましたね」「知らんもんやけん、降ったものが付いた体を洗うてね。それが後に死の灰じゃゆうてね」。黄ばんだ船員手帳をめくりながら、あるいは真っすぐ前を見つめながら、海とともに生きてきた男たちがあの日に思いを巡らせる。

この記事は有料記事です。

残り1787文字(全文2189文字)

あわせて読みたい

注目の特集