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「女帝」に怒り 斎藤美奈子さんが問う女性へのアンフェアな視線

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インタビューに答える斎藤美奈子さん=東京都渋谷区で2021年2月15日、藤井太郎撮影
インタビューに答える斎藤美奈子さん=東京都渋谷区で2021年2月15日、藤井太郎撮影

 権力の中枢に上り詰めた小池百合子・東京都知事の過去を丹念に描き、ベストセラーとなった「女帝 小池百合子」(石井妙子著、文芸春秋)。この本を、一貫して「性差別的で、ルッキズム(外見至上主義)にそったストーリー」と批判的に論じてきた人がいる。文芸評論家の斎藤美奈子さんだ。社会で活躍する女性について論じる際、私たちは無意識のうちに特殊視したり、定型的な見方に陥ったりしてはいないか。警鐘を鳴らす斎藤さんに、じっくり話を聞いた。【塩田彩/統合デジタル取材センター】

女性に求められる「個人の物語」

 ――斎藤さんは現代書館のウェブサイトや「ウェブちくま」の書評などで、「女帝 小池百合子」について厳しい批評をつづっていますね。例えば、以下のくだり「『女を使ってのしあがった』『媚(こ)びを売って地位を得た』『若い女は下駄(げた)をはかせられている』『逆差別だ』とは、能力のない男たちが口にする『悪口』の常套(じょうとう)句ですが、この本も、同じ轍(てつ)をふんでいる」――は印象的です。

 ◆本の発売は昨年の都知事選直前でしたし、小池さんを批判的に描いている内容ですから、主に野党系やリベラル派知識人から高い評価を受けていました。でも内容は問題が多かったと思います。人権や自由を重んじるリベラル派の男性は、「自分はジェンダーのこともわかっている」と自信を持っていて、その自信と「小池憎し」という政治的な党派性が批評の目を曇らせたのではないかと思いますね。

 同じく、権力批判という意味で高い評価を受けた劇映画「新聞記者」もそうです。あそこに出てくるのは、父のかたきをとるという個人的モチベーションで権力に立ち向かうヒロインと、夫を立てる内助の功を代表するような官僚の妻だけ。他の女性記者も出てこないし、新聞社で働く女性記者の実態も多様性も描けていなかったと思います。原案になった東京新聞記者、望月衣塑子さんの「新聞記者」とはまるで別の作品です。

 ――「女帝」についても「個人的な物語を強調しすぎている」と批判していました。

 ◆社会正義のために闘うとか、権力志向をもった女性に対して、世間はしばしば個人的な動機を探し出してきて、矮小化しようとします。メディアにもその傾向があるよね。生い立ちとか、過去のトラウマとか、身体的なコンプレックスとか、何の個人的な動機もなく、女性が権力を目指したり、社会正義のために闘ったり、寝ずに仕事をしたりするはずがないと、どこかで思っているのかもしれません。失礼な話ですよね。男子も女子も、学校では一応同じ教育を受けている。個人的な「物語」がなくたって、権力を目指したいと考える女性もいるでしょう。自分が当事者でなくても、理不尽なことに怒りを覚え、社会を変えたいと頑張る女性だっている。そこに男性女性の違いはないはずです。

「そそとしていろ」はアンフェア

 ――一方で、自ら「女性であること」を前面に出し、地位や政治権力基盤を築く女性もいるのではないでしょうか。そうした女性たちが「女性性」を批判の対象にされることについてはどう思われますか…

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