「生活からかけ離れている」社会学者が読み解く五輪への逆風
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東京オリンピック・パラリンピックの開催を巡っては、2月の森喜朗・組織委前会長の女性蔑視発言だけでなく、安倍晋三前首相の「アンダーコントロール」発言や招致を巡る不正疑惑など、ことあるごとに批判の声が上がってきた。「『メガイベント』の開催そのものが難しい時代になっている」。そう指摘するのが社会学者の酒井隆史さんだ。東京五輪ではそれがくっきりと表れているという。どういうことだろうか。酒井さんに読み解いてもらった。【待鳥航志/統合デジタル取材センター】
「五輪開催のための『幻想』を作り出せなかった」
――森前会長の女性蔑視発言以降、東京五輪の開催に反対する声が改めて強まっています。これまでの混乱をどのように見ていますか。
◆メガイベントの抱える問題が鋭い形で露呈していると思います。象徴的なのは2013年9月の招致演説で、当時の安倍首相が述べた福島原発事故を巡る「アンダーコントロール」発言です。直後に東電幹部が「(汚染水問題は)コントロールできていないと考えている」と述べたように、安倍さんの発言はうそだったわけですよね。虚偽の上に開催が決められ、そもそも五輪を開催させるだけの国民の「幻想」を作り出せていなかったということです。
――国民の幻想、ですか。
◆「みんなで同じ方向へ走っていくことが自分たちの生活を良くする」というような幻想です。
近代の五輪は、ある種のスペクタクル(大規模な見せ物)として国家を外に発信していく機会と、国内でさまざまな統制を強めていく機会という二つの側面を備えていました。
1964年の東京五輪もそうです。本来は多様なはずの人々の価値観を平準化して「国民全体の経験」として巻き込んでいく。たとえば長年住んでいた土地が再開発の対象になって、追い出される住民もいました。そういう一部の国民の不満を抑え込む五輪への「幻想」が必要になるわけです。
64年の東京五輪や70年の大阪万博は今でこそ美化されて語られることが多いですが、当時も…
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