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この国はどこへ コロナの時代に 評論家・佐高信さん 安倍・菅氏の身びいき 社会を食らう、内輪のルール

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佐高信さん=藤井太郎撮影
佐高信さん=藤井太郎撮影

 赤茶けた古い文庫本を開き、ゆっくりページをめくった。「ここに以前、自分で書いたことを思い出しまして」。気鋭の論客で知られる評論家、佐高信さん(76)は本の中の一文を指で示した。

 橋本龍太郎元首相の父で、厚相(現厚生労働相)などを歴任した自民党の元国会議員、橋本龍伍氏(1906~62年)の言葉がつづられていた。こんな言い回しだ。「公務員も、政治家も、一般の人が手に入れることのできない情報にしょっちゅう接する。そういう人間は株を扱ってはいけない。もし知っている情報を使わなかったと言い張っても、あらぬ誤解を受ける」と。政治家は、株式の保有はもちろん、ほんの少しでも国民から誤解を受けるような行動は慎まなければいけない、という戒めだ。龍伍氏は常々、それを口にしていたという。

 菅義偉首相の長男が総務省幹部を接待した問題が今、注目を集めている。長男は放送事業会社「東北新社」に勤め、その子会社は総務省から放送事業者の認定を受けた。総務省は「そんたく」し、長男の会社を特別扱いしたのではないか。行政がゆがめられたのではないか。接待を受けた官僚の処分や辞職が相次いでいるが、疑惑はいっこうに晴れない。そして菅首相はこの問題について問われた際、色をなして「長男は別人格だ」と言い切った。

 佐高さんのみけんにしわが寄る。「疑われても当然のようなことを身内がやっていたのに放っておき、露見して批判されたら『誤解だ』とばかりに言い返す。あまりにレベルが低すぎやしないか。『別人格』なんて通らない話だ。橋本龍伍氏が言い続けてきた戒めは、はるか遠くに忘れさられてしまったのか」

 菅政権が2020年9月に発足し、そろそろ半年がたとうとしている。長年、歴代首相を鋭い視線で見つめ続けてきた佐高さんはどう評価しているのだろう。

 「菅首相という人には『公(おおやけ)』という観念がないのではないか。観念がないというより、『公』が…

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