尼崎・稲村市長 「50対50の家事」より大事なこと
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全国で初めて2代連続の女性市長が誕生した兵庫県尼崎市。「2代目」の稲村和美市長(48)は、チャンスを前に一歩すくみがちな女性たちに「無理だと思わず、どんどん飛び込んでいこう」とエールを送る。そんな境地にたどりつくまでにどんな苦悩があったのか。【稲田佳代/阪神支局、野口由紀/大阪社会部】
レガシー受け、「障壁や困難感じず」
――女性市長としてどんな障壁や困難がありましたか。
◆市議会や職員、市民の意識の中に2期8年務められた白井文・前市長の「レガシー(遺産)」が間違いなくあり、みんな女性市長に慣れていました。職員も世代交代する中で、心理的な壁が低くなっており、女性ゆえの障壁や困難は正直あまり感じたことはありません。
白井さんからの引き継ぎで「女性市長が続くことを面白くない、と思う人は少なくないと認識しておいた方がいい」とは言われました。不思議ですよね、男性が3代続いてもなんとも思わないのに、女性が2代続くと、なぜ大騒ぎしないといけないんでしょう。おそらく慣れてないから違和感を覚える。今は途上なのだと思います。
行政のトップは1人なので、市民も議員も、この職業を優先すべき度合いが通常の職務よりも高いと考えています。就任当時、私は5歳の娘を保育園に送迎しており、有権者や男性議員から「仕事と子育ての両立ができるのか」という声は多くありました。白井さんは地域の行事にたくさん出ていましたが、執務のあり方としてその方針を見直したところ、「子どもが小さいから行事に来ないんだ」とも言われました。
女性の中にもまだそんなふうに感じる人がいることが社会的な壁の一つになっていると思います。本来、仕事と子育ての両立は性別にかかわらない問いです。市長という職業だけが特別なわけでなく、基本は他の働く母親と同じ。同世代ではかなり切り替えが進んできましたが、年配の女性は悪気なく保育園に預けること自体を「かわいそう」と言う人もいます。
「年齢が上に見える髪形」オーダー
――当選時は38歳で、全国最年少の女性市長。やりにくい面はなかったのですか。
◆幹部職員は年齢も経験も上なので、人生経験が少ない面を埋めなければいけません。私は童顔なので、30歳で県議になって以来しばらくは、美容院に行くたび…
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