コロナ禍で生きた「東日本大震災の学び」 精神科医・斎藤環さん
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コロナ禍と東日本大震災とには、いくつかの共通点がある。ウイルスと放射能。目に見えない、まだよく分かっていないリスクとどう向き合うか。リスクを高く見積もる人と、そうでない人とはどんなふうにコミュニケーションを取っていけばいいのか。精神科医の斎藤環・筑波大教授(59)は「対話」の必要性を説く。インタビューの2回目を紹介する。【聞き手・小国綾子/オピニオングループ】
ウイルスと放射能と
――コロナ禍でどの程度自粛し、行動変容するかをめぐって人々の対立軸が見えた時、東京電力の福島第1原発事故後、放射能の危険性をめぐる議論と対立を思い出しました。
◆原発事故後の放射能リスクをめぐる対立軸は大変深かったですね。人間関係が壊れるレベルの対立が全国のいたるところで生じました。私自身は「100ミリシーベルト以下は人体に害がない」とする立場でしたが、「ゼロリスク論」に立つ人々からは「御用学者」呼ばわりされることもありました。
――あの頃、放射能リスクをどう受け止めるかで、夫婦や友だちなど身近な人間関係まで壊れかけた、という話をよく聞きました。
◆しかし、あの時の経験が今回のコロナ禍に生かされている気がしています。
――えっ。どういうことですか?
支持されなかった極端な「ゼロリスク」論
◆東日本大震災と原発事故から10年。人々は今も福島に暮らし、福島産の農作物への風評被害も落ち着きました。リスクを過大に見積もることの弊害も、次第に明らかになってきたように思います。その反省があったからこそ、今回のコロナ禍では極端な「ゼロリスク」論が支持されなかったと思うのです。
コロナをめぐる議論の主な対立点は、第一に「全員がPCR検査を受けられるようにすべきかどうか」という議論。そして「ワクチンの副反応をどう考えるか」という議論でした。
前者については、全員検査はそもそも不可能だし、ナンセンスだ、というところに落ち着いた。後者についても、「反ワクチン」のような報道は現在ほとんどないし、あっても一斉に批判を浴びるでしょう。…
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