「見出しにとられますよ」そして高い発生確率だけ残された /3
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国の地震調査研究推進本部・地震調査委員会が2013年5月に発表した南海トラフの長期評価は、最終的に、他の地震では使われていない手法ではじき出された30年以内の発生確率「60~70%」が前面に出されることになった。「ものすごい混乱を引き起こす」「予算に影響する」。地震や防災の専門家が激論を交わした検討過程を振り返り、新型コロナウイルス感染症対策にも通じる「科学」と「政策」のあり方を検証する。
懸念があっても「科学的」を重視
12年の年の瀬、南海トラフの長期評価の公表に向けて、地震調査委員会の準備作業は大詰めを迎えていた。実質的に議論を進めた調査委の海溝型分科会では、委員の多くが「時間予測モデル」で算出された30年以内の発生確率「60~70%」について、科学的に問題が多いと考えていた。01年の前回の長期評価から南海トラフだけで採用されている手法で、同様の高い確率が毎年のように公表されてきた。
分科会は13年の公表では、他の地震で使われている「単純平均モデル」による確率と両論併記して公表する方針でまとまっていた。単純平均モデルを使うと、発生確率は「10~30%」に下がる。
当時の分科会の議事録には、次のような委員たちの不安が記録されている。
「どういうやり方をしても、今出ている確率より低い値しか出てこない」
「今まで60%、70%、80%だったものが、いきなり20%、30%になったと書いてしまうと、おそらくマスコミは喜んで確率が下がったと書き立てて、今まで何をやってきたのだという話になってしまう。それは、我々の趣旨とは外れている」
現在の地震学では、…
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