「飲み会断わる人」じゃダメなのか 双子育てた外資系幹部の反論
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「飲み会も絶対に断らない女としてやってきました」「断る人は二度と誘われません」――。菅義偉首相の長男が勤める放送事業会社から接待を受けて辞任した山田真貴子・前内閣広報官の若者向けの動画メッセージが議論を呼んでいる。積極的に人と関わって人脈を築こうという趣旨のようだが、未就学児を抱え、同僚との付き合いもままならない記者には、あまりに高い要求に聞こえる。「飲み会」はそこまで大事なのか。実際に双子を育てながら外資系企業でキャリアを重ねた働く女性の大先輩とともに、山田氏の発言について考えてみた。【大野友嘉子/統合デジタル取材センター】
「時代錯誤」と批判相次ぐ
動画は昨年、一般社団法人「超教育協会」(会長・小宮山宏元東京大学長)が公開した。現在は削除されているが、ネット交流サービス(SNS)などで出回っている当該動画とみられるものを確認すると、総務省総務審議官の肩書で山田氏はカメラに向かってこう語りかけている。
「実績を上げられるプロジェクトに巡り合ったり、あるいは自分にチャンスをくれる人に出会ったり、そういう幸運をみなさん願うと思います。しかし、良いプロジェクトや人に巡り合う確率というのは人によってそう違うはずはありません。違いは、どれだけ多くの人に出会い、多くのチャレンジをしているか。イベントやプロジェクトに誘われたら絶対に断らない。まあ、飲み会も断らない。断る人は二度と誘われません。幸運に巡り合う、そういう機会も減っていきます。私自身、仕事ももちろんなんですけれど、飲み会も絶対に断らない女としてやってきました。勉強、プロジェクト、人、多くのものに出会うチャンスを広げていってほしいと思います」
飲み会が人との親交を深める場であることは否定しないが、山田氏の言葉からは参加しないとチャンスやポストは回ってこないと受け取れる。子育てや介護、持病などで参加できない人はキャリアを諦めなければいけないのだろうか。記者(大野)自身も2人の未就学児を育てながら働いているが、誘われた飲み会に全て行くなんて不可能だ。そのような状況で、「断る人は二度と誘われない」と言われると、暗たんたる気持ちになるし、脅迫めいた言葉にすら感じる。
この発言を巡り、立憲民主党の辻元清美副代表は「飲み会に行かないと出世できないみたいなことを言うのは、同じ女性としてがっかりだ」と批判。ツイッター上でも、<時代錯誤の価値観だと思うし、そんなことをしなきゃ出世できない組織ならさっさと辞めた方が良い><出世した女性官僚の若者へのメッセージが「飲み会を絶対に断らないこと」というのはなんともかんとも><実務の能力よりも、「飲み会を断らない」などの体育会系ノリで昇進が決まるという事。古い感覚はなんとかしてほしい>――といった疑問の声が相次いだ。
双子を育てながらキャリアを積んだ女性は……
本当に「飲み会」に参加しなければ、よい人脈ともプロジェクトとも巡り合えないのか。ここで一人の女性に話を聞いた。アウトドア製品を手がけるコロンビアスポーツウェアジャパンで、サプライチェーンオペレーションズ本部長を務める能智(のうち)寿子さん(63)だ。
外資系銀行に勤めていた能智さんは、結婚を機に夫の地元に転居するため退職。1984年に再び上京し、米製薬大手ジョンソン・エンド・ジョンソンに就職した。医療機器の許認可を扱う薬事開発部に所属し、86年に双子の長男と次男を出産。2カ月ほどの産休を経て復職した後は、営業部などを経て、調達業務を統括するロジスティクス部長を務めた。07年にナイキジャパン、16年にコロンビアスポーツウェアジャパンと勤務先を変えつつ、それぞれの企業で商品調達の責任者を任されてきた。
実は私は、能智さんの息子たちと同じ中学、高校に通っていた。彼らから母親の仕事ぶりについて話を聞くにつけ、夫婦共働きで双子を育てながら一体どうやって順調にキャリアを重ねたのだろうと、学生ながらに不思議に思っていた。そんな能智さんに、山田氏の発言はどう映ったのだろう。
「飲み会がキャリアや人生を左右するとは、…
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