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中国全人代の開幕 自制なき拡大は協調崩す

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 年に1度の中国の全国人民代表大会(全人代)が開幕した。李克強首相はコロナ禍の克服を強調し、「主要国で唯一、プラス成長を実現した」と世界に先駆けた経済回復をアピールした。

 だが、米国との対立など中国を取り巻く国際環境は良好ではない。中国は国際社会の目がかつてなく厳しいことを自覚すべきだ。

 李首相は「脱貧困」などの成果を列挙し、今年の成長率目標を6%以上に設定した。今後、内需拡大や先端技術開発で持続的発展を目指す。国内総生産(GDP)の米国越えも視野に入ってきた。

 中国は改革・開放路線や世界貿易機関(WTO)加盟で国際ルールに適応し、世界と結びついてきた。これが発展の原動力でもあった。だが、近年は国際ルールを逸脱するような行動が目立つ。

 コロナ禍をめぐって中国の対応を批判したオーストラリアからの輸入規制を強めたのが一例だ。最近は台湾からのパイナップル輸入を禁止した。経済力を圧力の道具にする姿勢が不信を招いている。

 中国は米国のトランプ前政権が世界の分断をもたらしたと批判してきたが、責任の一端は中国にある。バイデン政権も半導体やレアアース(希土類)などの中国依存を減らそうとしている。

 2月には中国海警局公船の武器使用規定を定めた「海警法」を施行した。中国は軍備強化だけでなく、海警局公船の大型化、第2海軍化を進めている。海で接した日本など周辺諸国には脅威だ。

 全人代では「愛国者による統治」を旗印に香港の選挙制度の見直しも議論され、民主派排除が徹底される見通しだ。新疆ウイグル自治区でのウイグル族に対する人権弾圧にも世界的な批判が高まる。

 これまで国際秩序を支えてきた民主主義や人権などの価値観に背を向けるような姿勢が中国への警戒感を増幅している。

 中国にも経済格差など国内問題が山積している。日本や欧米との協調なしに持続的発展は実現できない。李首相は「平和的外交政策を堅持する」と述べたが、言葉だけに終わらせてはならない。

 力を背景に拡大を続けるのでは国際協調は保てない。国際社会の懸念に配慮した節度ある行動で大国としての度量を示すべき時だ。

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