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(河出書房新社・1870円)
手探りの相互扶助に耳を澄ます
いとうさんのあの小説があってよかった。二〇一三年に『想像ラジオ』を書いた著者は、東北での講演会である女性に言われたという。「私は津波で父を亡くした。父は昼に何を食べたのか。なぜ会社の人たちと違うところにいたのか。亡くなった人がどうやって命をなくしたか、私たちは全部知りたい。いとうさんは死んだ瞬間を想像して書いてくれた」
以降、著者は東北を訪れて人々の話を聴く活動を始める。お腹(なか)に子どもを身ごもったまま避難した母親。二本松から浪江に移って有機農業を営む農家。放射能と戦う創作舞踊を子どもたちと作った日本舞踊の先生…。その語りを本作としてまとめるにあたって、著者は自らの言葉を消している。自分は、ただ聴く。今度は東北が喋(しゃべ)る番だから。
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