特集

今週の本棚

「面白い!読ませる!」と好評の読書欄。魅力ある評者が次々と登場し、独自に選んだ本をたっぷりの分量で紹介。

特集一覧

今週の本棚

伊藤亜紗・評 『福島モノローグ』=いとうせいこう・著

  • ブックマーク
  • メール
  • 印刷
『福島モノローグ』
『福島モノローグ』

 (河出書房新社・1870円)

手探りの相互扶助に耳を澄ます

 いとうさんのあの小説があってよかった。二〇一三年に『想像ラジオ』を書いた著者は、東北での講演会である女性に言われたという。「私は津波で父を亡くした。父は昼に何を食べたのか。なぜ会社の人たちと違うところにいたのか。亡くなった人がどうやって命をなくしたか、私たちは全部知りたい。いとうさんは死んだ瞬間を想像して書いてくれた」

 以降、著者は東北を訪れて人々の話を聴く活動を始める。お腹(なか)に子どもを身ごもったまま避難した母親。二本松から浪江に移って有機農業を営む農家。放射能と戦う創作舞踊を子どもたちと作った日本舞踊の先生…。その語りを本作としてまとめるにあたって、著者は自らの言葉を消している。自分は、ただ聴く。今度は東北が喋(しゃべ)る番だから。

この記事は有料記事です。

残り1719文字(全文2073文字)

あわせて読みたい

この記事の特集・連載
すべて見る

注目の特集