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東日本大震災

2011年3月11日に発生した東日本大震災。復興の様子や課題、人々の移ろいを取り上げます。

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なぜ歓迎されない? 「イノベ」キーワードの被災地復興構想

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福島ロボットテストフィールド=福島県南相馬市で2021年2月13日、本社ヘリから手塚耕一郎撮影
福島ロボットテストフィールド=福島県南相馬市で2021年2月13日、本社ヘリから手塚耕一郎撮影

 イノベーション(技術革新)をキーワードに、東日本大震災の被災地を復興させよう――。そんな構想が福島県で進んでいる。沿岸部(コースト)の各自治体には、最先端の技術を駆使した拠点施設がずらりと並ぶが、地元産業界の受け止めは冷ややかだ。なぜ、国と県肝いりの事業は地域に歓迎されていないのか。【春増翔太】

「地元のためという発想は…」

 福島県南相馬市の海沿いに、滑走路や巨大な屋内水槽を備えた「福島ロボットテストフィールド(RTF)」が広がる。国と県が被災地で進める「イノベーション・コースト構想」の事業費156億円を投じ、2020年3月に開所した。「ロボット産業の集積や人材育成に取り組む拠点」として東日本大震災からの復興をうたう。

 元々、金属加工や機械製造が盛んな同市では、震災後に地元の製造業者らが「ロボットのまち」を掲げた取り組みを始めていた。そうした場所に設けられたRTFは、ドローンや災害救助ロボットなどの性能試験や認証試験に利用できる。国や県は、地元企業に最先端の設備を使ってもらうことで製品開発などに結びつけてもらいたい考えだが、地元産業界の反応は薄い。

 「地元のためという発想はあまりないと思う」と話すのは、約70社でつくる「南相馬ロボット産業協議会」会長で機械設計会社「YUBITOMA」代表の五十嵐伸一さん(65)だ。一つの記憶があるという。

 RTF開所の約1年前。県の担当者が「地元企業にも使ってほしい」と、協議会に設備への要望を聞きに来た。五十嵐さんらは、扱いが容易で使用頻度の高い金属加工装置を求めたが、開所直前の内覧会で見たのは全く別の機器。「扱いの習得に何カ月もかかる機械を誰のために」と感じた。

 地元企業は部品製造など下請け仕事が多く、先端ロボットを一から開発する企業とは技術力に差がある。「別の機器」について県の担当者は…

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