- ツイート
- みんなのツイートを見る
- シェア
- ブックマーク
- 保存
- メール
- リンク
- 印刷

イノベーション(技術革新)をキーワードに、東日本大震災の被災地を復興させよう――。そんな構想が福島県で進んでいる。沿岸部(コースト)の各自治体には、最先端の技術を駆使した拠点施設がずらりと並ぶが、地元産業界の受け止めは冷ややかだ。なぜ、国と県肝いりの事業は地域に歓迎されていないのか。【春増翔太】
「地元のためという発想は…」
福島県南相馬市の海沿いに、滑走路や巨大な屋内水槽を備えた「福島ロボットテストフィールド(RTF)」が広がる。国と県が被災地で進める「イノベーション・コースト構想」の事業費156億円を投じ、2020年3月に開所した。「ロボット産業の集積や人材育成に取り組む拠点」として東日本大震災からの復興をうたう。
元々、金属加工や機械製造が盛んな同市では、震災後に地元の製造業者らが「ロボットのまち」を掲げた取り組みを始めていた。そうした場所に設けられたRTFは、ドローンや災害救助ロボットなどの性能試験や認証試験に利用できる。国や県は、地元企業に最先端の設備を使ってもらうことで製品開発などに結びつけてもらいたい考えだが、地元産業界の反応は薄い。
「地元のためという発想はあまりないと思う」と話すのは、約70社でつくる「南相馬ロボット産業協議会」会長で機械設計会社「YUBITOMA」代表の五十嵐伸一さん(65)だ。一つの記憶があるという。
RTF開所の約1年前。県の担当者が「地元企業にも使ってほしい」と、協議会に設備への要望を聞きに来た。五十嵐さんらは、扱いが容易で使用頻度の高い金属加工装置を求めたが、開所直前の内覧会で見たのは全く別の機器。「扱いの習得に何カ月もかかる機械を誰のために」と感じた。
地元企業は部品製造など下請け仕事が多く、先端ロボットを一から開発する企業とは技術力に差がある。「別の機器」について県の担当者は…
この記事は有料記事です。
残り3458文字(全文4232文字)
時系列で見る
-
「原発の安全神話」削除一転、パネル新設 問われる伝承施設の意義
939日前深掘り -
原子力災害伝承館、被災者「教訓分からぬ」批判 半年待たず展示替え
939日前深掘り -
「娘と走りたい」大川小遺族の聖火ランナー コロナ禍でも「意味」信じて
939日前 -
義援金の恩、忘れません 台湾でイベント 東日本大震災10年
939日前 -
石巻の「ほやドル」 津波で犠牲になった祖父への「手紙」を歌に
939日前動画あり -
コロナ禍で生きた「東日本大震災の学び」 精神科医・斎藤環さん
939日前 -
被災高齢者から聞いた「座れなかった」 防災チェア、元記者開発
939日前 -
神様、友達を返して 大川小児童、もがいた10年
939日前 -
「科学だけでいいのか」調査委トップの苦悩と異例の判断 /2
939日前図解あり -
なぜ歓迎されない? 「イノベ」キーワードの被災地復興構想
940日前深掘り -
友好と発展願うモニュメント除幕 双葉町が集団避難の埼玉・加須
940日前 -
「原発、東電から分離を」 元新潟知事の泉田衆院議員
940日前 -
首相が福島・大熊、双葉両町など視察 「国が責任持って復興」
940日前 -
震災前日のあなたへ 教訓伝える木碑建て替え 高校生と住民で文言
940日前 -
被災免れ資格あるか葛藤 「関心持つこと大切」と活動始める大学生
940日前 -
がれきではなく「被災物」 学芸員は泣きながら痛みを拾い集めた
940日前 -
コロナ禍で「女性が追い詰められた理由」 精神科医・斎藤環さん
940日前 -
震災10年、ようやく正職員に その道のりで長崎の子供に誓った夢
940日前 -
南海トラフの発生確率を巡って紛糾した「重大な問題」とは /1
940日前図解あり