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科学や医療を巡るあらゆる出来事を永山悦子・医療プレミア編集長兼論説室が読み解きます。

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賢治と源蔵=永山悦子

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東日本大震災で被災した岩手県陸前高田市立博物館から回収した収蔵品を洗浄、修理する作業は今も続いている=2011年夏ごろ(同博物館提供)
東日本大震災で被災した岩手県陸前高田市立博物館から回収した収蔵品を洗浄、修理する作業は今も続いている=2011年夏ごろ(同博物館提供)

 宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」に、クルミの化石が登場する。「くるみが沢山(たくさん)あったろう。それはまあ、ざっと百二十万年ぐらい前のくるみだよ」と。

 賢治は、「イギリス海岸」と名付けた岩手県花巻市内の北上川河畔で、自らクルミ化石を拾っている。1922年、友人の知り合いだった博物学者の鳥羽源蔵に、その化石の鑑定を相談した。すると、源蔵は東北帝国大の地質学者、早坂一郎を紹介。数百万年前の貴重なバタグルミの化石と分かり、論文にもなった。

 クルミ化石だけではなく、源蔵は賢治の多くの作品に影響を与えた。有名なのは、童話「猫の事務所」。猫たちの話題に上ったベーリング地方の有力者の名が「トバスキー酋長(しゅうちょう)」と「ゲンゾスキー財産家」だった。後に「北の南方熊楠」と呼ばれ、東北の万物に通じていた源蔵は、賢治の好奇心を刺激する存在だったのだろう。

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