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バイデン氏の中東外交 現実的思考が欠かせない

 バイデン米大統領が前政権の中東政策を次々と転換している。

 同盟国であるサウジアラビアへの武器売却を凍結し、イスラエルと対立するパレスチナ自治政府への援助を再開する。

 3年前のサウジ人記者殺害事件でサウジのムハンマド皇太子が作戦を承認していたと認定する米政府の報告書を公表した。

 一方、イランが支援するイエメンの武装勢力へのテロ組織指定を解除し、離脱したイラン核合意への復帰に前向きな姿勢を示す。

 サウジやイスラエルを偏重し、イランを敵視したトランプ前政権の政策を覆し、中東外交を正常な軌道に戻す試みといえる。

 だが、いったん生じた混乱を収拾するのは容易ではない。

 特に緊迫しているのがイラン情勢だ。制裁を再開した米国に反発し、イランは核開発を進めている。

 短期間で核兵器製造に必要なレベルまで濃度を引き上げられる濃縮ウランを作り、国際機関の抜き打ち査察受け入れを停止した。

 親イラン派の武装勢力がイラクの米軍駐留施設付近にロケット弾を撃ち込み、これに対抗して米国がシリアの親イラン武装組織の関連施設を空爆した。

 米軍は「限定攻撃」というが、多数の死者が出たとの情報もあり、批判がある。イランとの対話再開にも影響が出かねない状況だ。

 中東情勢はこの4年で様変わりした。湾岸などのアラブ4カ国がイスラエルと国交を樹立し、トルコが勢力圏を広げている。ロシアと中国の存在感も増した。

 いずれも経済や安全保障をにらんだ動きだ。イスラエル対アラブ、イスラム教スンニ派対シーア派という従来の対立にとどまらず、地域大国が覇権を争う新たな構図が浮き彫りになっている。

 米国は変化に応じた現実的な外交を展開する必要がある。イランとの再交渉ではミサイル規制などを含む厳しい内容でなければイスラエルは反発を強めるだけだ。

 だからといってイスラエル偏重ではイランの信頼は得られまい。イスラエルに自制を求めればイランへのメッセージになるはずだ。

 中東外交の目的は戦火を鎮め、安定をもたらすことにある。対立をあおるのではなく対話を主導するのが、米国外交の役割だろう。

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