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岩田健太郎氏に聞く ワクチンによる「集団免疫」成立の3条件

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インタビューに応じる岩田健太郎教授=2021年2月22日、オンライン画面から
インタビューに応じる岩田健太郎教授=2021年2月22日、オンライン画面から

 新型コロナウイルスのワクチン接種が日本でも始まった。変異ウイルスが次々と生まれる中、ワクチンで「集団免疫」は果たして獲得できるのか。日本が目指すべきゴールはどこなのか。神戸大大学院医学研究科の岩田健太郎教授(49)に聞いた。【國枝すみれ/統合デジタル取材センター】

「突然変異でめったにないことが…」

 ――南アフリカ、ブラジル、インド、米国などで次々と変異ウイルスが見つかっています。ワクチンは魔法のつえなのでしょうか。

 ◆遺伝子が変異することは普遍的な現象で、しょっちゅう起きることです。ウイルスだけでなく、微生物や人間でも遺伝子の突然変異は起きています。でも、遺伝子の変化と性質(キャラクター)の変化は直接にはつながっていません。つまり、突然変異は起きても、人間の腕が突然4本になったり、身長が6メートルになったりはしないのです。

 しかし、新型コロナウイルスの場合、1年ちょっとで世界の感染者数が1億人を超えています。突然変異の数も膨大になるため、短期間でウイルスが変化するという、めったにないことが起きてしまっている。もちろん技術の進歩により、変異が見つけやすくなったという側面もありますが。

 英国で見つかった変異ウイルスは感染率が高く、流行に拍車がかかってしまうので、非常に心配しています。英アストラゼネカのワクチンは、南アで発見された変異ウイルスに対して有効性が低いともいわれています。

 感染のスピードが上がる、既存のワクチンが効きにくくなる――。この二つが懸念材料です。病原性が高まった変異ウイルスの出現は今のところ強くは心配していませんが、可能性としては否定できない。新型コロナウイルスは、「ウイルス感染症ってこんなもんだよね」という我々の常識を、次々と破ってきているからです。

 ――新型コロナのワクチンはウイルスの遺伝子の一部を利用した新しい技術を使い、急ピッチで開発されました。長期的な副反応の心配はないのでしょうか。

 ◆生物学的に言えば、ほとんど気にする必要はありません。米国のファイザー社とモデルナ社のワクチンで使われているメッセンジャーRNAは、人間の遺伝子に組み込まれたりしないし、とても脆弱(ぜいじゃく)で細胞の内でも外でも1週間ほどで壊れてなくなります。有機水銀のように身体の中に残ってずっと作用して水俣病を引き起こすようなことはないのです。

 ただ、慢性的な反応が出る可能性はあります。注射を打った時の痛みなどのトラウマがきっかけで体調不良の症状が起き、それが続く。子宮頸(けい)がんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)のワクチンでもありましたが、これはワクチンの成分によって引き起こされた自己免疫疾患などの副反応ではありません。だから、そういう症状が起きる確率は、他のワクチンと比べてHPVワクチンが特に高いわけではないのです。身体的、心理的なトラウマがきっかけで、眠れない、気分が悪い、頭が痛い、などの症状が出ることは、私にもあります。強いか弱いかの違いがあるだけで、ほとんどの人に起きることです。なので、ワクチン接種後にそういう症例が一定数出てくることは予期しておくべきでしょう。

 ただ、コロナに罹患(りかん)してもトラウマは起きます。血栓ができて臓器の細胞に傷がつくなど生物学的なトラウマもありますが、集中治療室(ICU)に入院しなくてはならなかった、といった心理的なトラウマも起きます。トラウマが心身に影響を与え、それが長く続くこともあります。

 コロナに感染し、世界で250万人以上が死んでいます。コロナのワクチンは僕が知る限り、まだ誰も殺していません。感染する方がはるかに怖いのです。相対リスクの考え方が重要です。ワクチンはコロナの感染や発症、重症化を防ぐ点でとても効果が高いことは分かっているので、これを最大限活用することが大事です。

 ――ワクチンを打たない方が良いという人たちの集団はありますか?

 ◆今のところ、「打たない方が良い」という集団はありません。しかし、ワクチンの有効性についてのデータが十分でない集団はあります。妊婦と小児です。

 例外は、ワクチン成分…

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