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花谷寿人の体温計

政治や社会の出来事が人々に与える影響を「体温」として読み解く、花谷寿人論説委員のコラム。

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花谷寿人の体温計

原発のない村

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 切り立った断崖がびょうぶのように連なる。海のアルプスと呼ばれる美しい海岸が岩手県田野畑村にある。作家の吉村昭はここを何度も訪れ、小説の舞台にした。

 その一つが「梅の蕾(つぼみ)」。陸の孤島の無医村に医師を招こうと奔走する村長と、都会から家族で赴任した医師一家の物語だ。

 それ以前、戦後間もないころから村で養護教諭や保健師を務めた人がいる。2015年、97歳で亡くなった大阪出身の岩見ヒサさん。夫と幼い息子に先立たれ、夫の古里で暮らすことを選ぶ。病気、出産、育児指導……。村民の命を救う生きがいを得た。

 村は約40年前、原発建設の候補地になる。貧しい村は交付金目当てに誘致を進めるかもしれない。海への影響は。万一、事故が起きたらどうなるのか。ヒサさんは婦人会や議員に呼びかけ、反対運動を始めた。計画は止まる。

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