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テディベアに全財産しのばせ東欧から出国 ワクチン開発立役者

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カタリン・カリコさん(右)とビオンテックを創業したウグル・シャヒン最高経営責任者=2013年(カリコさん提供)
カタリン・カリコさん(右)とビオンテックを創業したウグル・シャヒン最高経営責任者=2013年(カリコさん提供)

 東西冷戦期の1985年、共産主義体制の東欧ハンガリーから、「鉄のカーテン」を越えて米国へ向かおうとする1人の女性がいた。全財産と呼べるのは、知人に車を売って得た現金を闇市で両替した約900英ポンドだけ。当時は100米ドルを超える外貨の持ち出しが禁じられていた。

 賭けに出た。エンジニアの夫、そして2歳の娘と一緒に出国する際、娘が抱いていたクマのぬいぐるみ「テディベア」に、この全財産をそっとしのばせた。

 「隠すしかなかったのです」と彼女は打ち明ける。米国の受け入れ先の大学は決まっていた。「でも100ドルで(最初の給料日までの)30日間、家族3人で何を食べてどこで暮らせというのでしょう。(移動時には)娘からも、ぬいぐるみからも目が離せませんでした」。米国には親戚も頼れる人もいなかった。「お金もなく、片道の旅でした。だから地獄のように働きました。生き残るために」

 無事出国し、渡米したこの女性こそ、新型コロナウイルスのワクチン開発の立役者の一人で生化学者のカタリン・カリコさん(66)=米東部ペンシルベニア州在住=だ。日本で最初に承認されたワクチンは「メッセンジャーRNA(mRNA)」と呼ばれる遺伝物質を使った新しい技術が生かされている。現在、ドイツのバイオ企業ビオンテックで上級副社長を務めるカリコさんは、このmRNAの研究を30年以上続ける現役の科学者だ。

 今年2月8日、カリコさんは医学分野で重要な功績を上げた人に贈られるローゼンスティール賞を受賞した。20年来の研究パートナーである免疫学者のドリュー・ワイズマン米ペンシルベニア大教授との共同受賞だった。オンライン授賞式で米国立アレルギー感染症研究所のファウチ所長は2人をこうたたえた。「パンデミック(世界的大流行)に終止符を打つ希望を世界に届け、mRNAを用いたワクチンや治療の…

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