仮設入れず炊飯器で「風呂」8年 在宅被災者、届かぬ公的支援
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東日本大震災では、津波や地震による自宅の損壊が部分的にとどまったことから、公的支援の対象外になったケースが多くあった。その中で、元々の生活に経済的な余裕がないため、家を修理できず、壊れた家に住み続けざるを得ない人もおり、「在宅被災者」と呼ばれてきた。国や自治体は支援の枠組みを広げるが、個々の被害状況に応じた支援を求める声も上がる。【金森崇之、韓光勲】
「家や家族を失った人もいるのだから…」
宮城県女川町の無職、横江義行さん(66)は震災で自宅の浴槽がひび割れて使えなくなり、修理するお金もないまま、約8年間、炊飯器で沸かした湯で体を洗う生活を続けた。1人で暮らす自宅は震災直後の町の判定で「一部損壊」とされ、国の支援制度の対象外だった。原則として自宅を失った人しか入れない仮設住宅にも入居できなかった。
震災後に心臓機能障害を患い、生活保護や年金で生計を立てたが、浴槽などを直す経済的な余裕はなかった。生活が落ち着いたのは2019年3月。在宅被災者問題に取り組む同県石巻市の一般社団法人「チーム王冠」が保証人を探すなどし、町が整備した災害公営住宅の空き室に被災者としてではなく一般枠で入居できた。横江さんは「家や家族を失った人もいるのだからと、ずっと我慢してきたが、もう少し早く行政の助けがほしかった」と振り返る。
同市のパート従業員、古座(こざ)登美子さん(67)の木造平屋の自宅は震災時、「大規模半壊」と判定された。自宅は借家で、長女に障害があったため「地域のサポートを受けられる今の場所を離れたくない」と住み続けることを決め、修理しようとすると、取り壊しを求める大家に拒否された。仕方なく、「大規模半壊」で受給した国の支援金250万円のほとんどを使い、壊れた借家を買い取った。支援金を使った古座さんが修理に使える資金は、他にはなかった。
こうした経緯から、自宅を直せないまま雨漏りのする家に住み続けてきた。20年春、土地などを担保にする高齢者向け融資を受けてようやく屋根を直すことができ…
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