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#最後の1年

新型コロナに揺れる学生スポーツ界。最高学年の選手は無念や戸惑いを抱きながら「最後の1年」を過ごしています。

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不条理の先、東大アメフト部主将が立った境地 盟友と心理戦の末

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シーズン最終戦後、保護者らからチームカラーの青い花束を受け取った唐松=東京都調布市のアミノバイタルフィールドで2020年11月28日、吉田航太撮影
シーズン最終戦後、保護者らからチームカラーの青い花束を受け取った唐松=東京都調布市のアミノバイタルフィールドで2020年11月28日、吉田航太撮影

 東大アメリカンフットボール部の前主将で、現役東大生として初の日本代表になった唐松星悦(しんえ、22歳)=文学部4年=は卒業を控えた2月、横浜市の自宅にいた。新型コロナウイルス、緊急事態宣言……。テレビからは苦い記憶を呼び覚ます言葉が聞こえてくる。だが、“最後”の試合で盟友に背中を押され、気持ちは前向きになっていた。

 横浜市の私立の中高一貫校、浅野中・高から現役で東大に合格した唐松は、大学4年間で競技人生に区切りをつけるつもりだった。だが、部活動を引退した今も自室で黙々と体を鍛え続け、186センチ、125キロの強じんな体を維持している。この1年、不条理と直面してきた中で、体の内側からふつふつとわき上がるものを感じている。

飛躍を期した最終学年のはずが…

 関東1部上位リーグ「TOP8」で6位だった昨季から飛躍を期し、「学生日本一」を目指した最終学年だった。2020年2~3月の日本代表の米国遠征から帰国し、肌で感じたレベルの高いプレーを還元しようと意気込んでいたところ、コロナの影響で部活動は休止し、春の試合は全て中止となった。

 付属高からの進学や推薦入試で競技経験者が多い私立大と違い、東大は大半が初心者で、唐松のように中学から競技経験がある部員は一握りしかいない。毎年、春から練習試合などでじっくりと実戦を積むことで公式戦で戦えるレベルに高めていくが、東大が選手同士の接触を伴う練習を再開できたのは8月下旬から。集大成となる秋のリーグ戦開幕は10月。例年より1カ月遅いとはいえ、急ピッチでのチーム作りを強いられた。

 総当たりで各チーム計7試合を行っていたリーグ戦は、昨秋は2ブロックに分かれ、各3試合と順位決定戦の計4試合になった。それでも大学日本一を争う「毎日甲子園ボウル」につながる道がある。「ぶっつけ本番」で臨んだ10月17日の初戦、中大戦はQBボストロム丞慈(じょうじ、23歳)=法学部4年=らの活躍で勝った。しかし、その後は法大、日大に圧倒され、リーグ戦を1勝2敗で終えた。

“最終戦”で浮かんだ感情

 11月28日、早大との5、6位決定戦…

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