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あしたに、ちゃれんじ

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自ら学び、未来を開く 探究型教育を保護者と共に実践 炭谷俊樹さん=中川悠 /大阪

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代表の炭谷俊樹さん。学校の拠点「六甲山のびのびロッジ」(神戸市灘区)は山の上にあり、子どもたちは自然の中で学んでいる 拡大
代表の炭谷俊樹さん。学校の拠点「六甲山のびのびロッジ」(神戸市灘区)は山の上にあり、子どもたちは自然の中で学んでいる

 新型コロナウイルスの影響が今も色濃く、子どもたちが通う教育機関では混乱が続いている。感染対策はもちろん、授業の進度、運動会や修学旅行をはじめ行事の開催など教職員の悩みは尽きない。

 コロナ禍の中でも子どもたち、保護者、教職員が一体となって困難を乗り越え続けている学校がある。神戸市の六甲山にある「ラーンネット・グローバルスクール」。同校は独自の教育理念で運営されているオルタナティブスクールで、デンマークの探究型教育をベースに20年以上前に設立された。

 現在は幼・小・中学生75人が在籍。「ナビゲータ」と呼ばれる教員が企画したテーマを通じ、理科、社会、芸術、算数、コミュニケーションなどを教科横断的に学んでいる。大切にするのは子どもたち自身が考え、課題を解決することを促す学習。こうした学びは、国の新学習指導要領でも「生きる力」のその先の力を育成する理念「社会に開かれた教育課程」のもとで重視されている。

 新型コロナ禍が深刻化した昨年3月。同校の代表、炭谷俊樹さん(60)は「休校の中で何ができるかについて悩みました」と話す。「でも、子どもたちの学びの場をなくさない方法を教員が率先して自主的に考え始めたんです」。検討を始めた翌週の月曜日にはオンライン学習をスタートさせ、最初はパンを作るなど楽しいことから工夫し、結局は基礎学習を含む全てのカリキュラムをオンラインで行うことができた。

 また、学期ごとに開いていた保護者会を、コロナの状況が変化するたびにオンラインで実施。密をどう避けるか、学習をどう維持するかを共に考えた。医療分野で働く保護者から感染対策について教わることもあった。「多くの学校では、保護者と先生との距離を考えますが、危機的な状況を一緒に乗り越えられたからこそ双方の絆がさらに強くなりました」。子どももアイデアを出し合い、運動会や発表会も緊急事態宣言中はオンラインで開催。今年度に予定していた全ての行事を実施できたのだった。

 炭谷さんは30代前半、世界的なコンサルティング企業「マッキンゼー・アンド・カンパニー」に勤務していた時にデンマークに長期滞在し、北欧の自ら学ぶ力を育てる教育に驚いた。日本の管理型教育とは全く異なる、子どもたちの自主性を伸ばす教育。帰国して同社を退職し、強い志と共に1996年に自ら教育機関を立ち上げた。「日本の教育は30年遅い」と指摘する。

 炭谷さんは2010年から、80カ国から留学生が集まる神戸情報大学院大の学長も務める。不安定な時代だからこそ、自分が学びたいことをとことん学ぶ力が必要だと実感している。「探究する力を持っている子どもたちは自己肯定感が高く、何より学ぶ意欲が強い。自分の意思で学びを切り開く力こそ未来を生き抜く力になるんです」。炭谷さんの視線の先には、瞳をキラキラさせた子どもたちの姿がある。<次回は4月16日掲載予定>


 ■人物略歴

中川悠(なかがわ・はるか)さん

 1978年、兵庫県伊丹市生まれ。NPO法人チュラキューブ代表理事。情報誌編集の経験を生かし「編集」の発想で社会課題の解決策を探る「イシューキュレーター」と名乗る。福祉から農業、漁業、伝統産業の支援など活動の幅を広げている。

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