中国のウイグル弾圧「ジェノサイド」認定に日本はなぜ慎重なのか

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茂木敏充外相=首相官邸で2020年12月21日午前11時15分、竹内幹撮影
茂木敏充外相=首相官邸で2020年12月21日午前11時15分、竹内幹撮影

 民族や宗教などの集団を破壊するために、そのグループに属する人たちに重大な危害を加える、出生を阻む措置を強制する――。中国政府が新疆ウイグル自治区で行っていることが「ジェノサイド(大量虐殺)」の定義に当てはまるかどうかが、国際社会の大きなテーマになっている。米政府は新疆ウイグル自治区での人権弾圧を「ジェノサイド」と認定したが、日本はそうした表明には慎重だ。なぜなのか。

国際社会に広がる懸念

 世界中に大きなショックが広がったのは2月初旬、英BBCの報道がきっかけだった。

 「私の役目は彼女たちの服を脱がせ、動けないように手錠をかけることでした」。報道は、新疆ウイグル自治区の施設にいた女性らの証言を基に、施設内で組織的な性暴力が行われていたという内容だった。

 中国政府は「うそを広めている」と否定したが、人権重視を掲げる欧米各国からは懸念や非難の表明が相次いだ。

 新疆ウイグル自治区の人権状況に関しては近年、少数民族に対する強制労働や不妊手術の強制、子供に対する同化教育などを告発する報道や報告が次々に出されている。治安対策としてウイグル人らへの監視や取り締まり、収容施設への移送を強化していることを示す中国政府の「内部文書」も取り沙汰され、報道機関などによる分析が進んでいる。ウイグル人など100万人以上が中国国内で強制収容されているとの見方もある。

米国は「ジェノサイド」と認定

 国際社会に懸念が広がる中、他国に先駆けて強い対応をとったのが米国だ。

 ポンペオ国務長官(当時)は退任を目前に控えた今年1月19日、中国政府が新疆ウイグル自治区で行っている行為を「ジェノサイド」と認定し、「私たちはウイグル人を破壊するための組織的な企てを目撃している」と断言した。

 ジェノサイドはギリシャ語の「人種・部族」とラテン語の「殺す」を組み合わせた造語で、第二次大戦中のナチス・ドイツによるユダヤ人虐殺を非難する文脈で使われるようになった。

 1948年に国連で採択されたジェノサイド条約は、人種や民族、宗教によるグループを破壊する目的で①メンバーを殺害する②重大な身体的・精神的危害を与える③身体的な破壊をもたらすための生活条件を課す④出生を防止する措置を強制する⑤子供たちを別のグループに強制的に移す――と定義している。

 ただ、ポンペオ氏は中国政府のどのような行為が「ジェノサイド」なのかや、ジェノサイド条約にどう関わるかを説明したわけではない。退任直前という表明のタイミングから、「人権状況の改善に本腰を入れる姿勢を示したというより、政治姿勢をアピールするための声明ではないか」との臆測も広がった。だが、ポンペオ氏の後任のブリンケン国務長官は「ウイグル人にジェノサイドが行われたという私の見解に変化はない」と明言した。国際法上の犯罪である「ジェノサイド」を持ち出して対中圧力を強める手法は、バイデン政権誕生後も引き継がれることになった。

「材料不足」以外に透けて見えるもの

 それに対し、日本政府は…

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