「どうせ女は…」加藤陽子さんが今も許せない「グロテスク」な言葉
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「私、へこたれていませんよ」。張りのある朗らかな声が印象に残った。歴史学者の加藤陽子・東京大教授だ。日本近代史の優れた研究者として知られるが、政府に任命拒否された日本学術会議の新会員候補6人のうちの一人となり、昨秋は「渦中の人」になった。それでも前向きに自らの道を究める加藤さん、女性として苦労したことはなかったのだろうか。東大の女子学生の少なさや選択的夫婦別姓の問題など、ジェンダーに関するあれこれを聞いてみた。【牧野宏美/統合デジタル取材センター】
生き方選べなかった「祖母」や母
――加藤さんが学生、教員として長く過ごしてきた東大ですが、女子学生の比率は現在でも約2割にとどまり、少数派です。もともとは、なぜ東大を選んだのですか。
◆実は、私の生い立ちが関係しています。自己決定権や個人の尊厳の問題に、早くから敏感にならざるを得ない家庭環境でした。1923年生まれの父は44年に応召、ソ連の国境と近い満州(現中国東北部)の東寧というところの守備隊に送られ、同年10月に熊本予備士官学校に入るため内地へ戻りました。幹部候補生試験に合格できたことで死地を脱することができ、本土決戦要員として高知の高角砲陣地で終戦を迎えます。戦後に結婚しますが、最初の妻を結核で亡くし後妻を迎えます。それが私の母でした。私と姉は父母の子ですが、我が家には亡くなった先妻さんの母が同居していました。父はこの「義母」を、この時代にはよくあった道義心によるものでしょうが、最期まで面倒をみていました。
家族の仲は悪くはなかったのですが、時に「祖母」と母との間に子どもでもわかる緊張感が漂うことがあり、私は幼い頃から2人をかわいそうだと思っていました。自分の意見を述べたり、生き方を決めたりできなかったからです。「祖母」には他にも実の娘がおりましたから、本当は彼女と暮らしたかったかもしれない。母の心情はなお複雑であったでしょう。そのような環境で育ちますと、女性も自分の望む生き方を自分で言えなければ駄目だなと、またそれを言える力を持たなければ駄目だなと自然に考えるようになりました。
東大を選んだのはかなり自覚的だったと思います。学問を学べば生き方の選択肢も広がり、自己決定権も増すと素朴に信じていたと思います。
――入ってみてどうでしたか。
◆とにかく「野蛮」な時代で(笑い)。…
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