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堀江敏幸・評 『百鬼園先生 内田百閒全集月報集成』=佐藤聖・編

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『百鬼園先生 内田百閒全集月報集成』
『百鬼園先生 内田百閒全集月報集成』

 (中央公論新社・5280円)

言葉の錬金術を照らす87の証言

 内田百閒(ひゃっけん)は一九七一年四月、八十一歳で死去した。今年は没後五十年。それを記念して編まれた本書には、講談社版『内田百閒全集』(全十巻、七三年完結)および福武書店版『新輯(しんしゅう) 内田百閒全集』(全三十三巻、八九年完結)の月報と両者の内容見本、さらに福武文庫の百閒シリーズに添えられた解説が収められている。別刷の月報は全集でしか読むことができない。いくら熱心な愛読者でも大部の全集を二種類所有するのは難しいだろうから、各号につき数名の書き手による小文の集成は、誠にありがたい企画である。寄稿者は、百閒を愛読する作家、批評家、担当編集者、法政大学時代の教え子から主治医まで、文庫解説者もあわせて総勢八十七名。それぞれの立場からこの作家のひととなりや仕事ぶりに触れた証言はどれも興味深い。

 一八八九年(明治二十二年)、岡山の造り酒屋の長男として生まれた百閒こと内田栄造は、十代半ばから漱石に傾倒し、雑誌『中学世界』に投稿した写生文で早くから注目されていたが、六高時代には俳句に熱中し、俳号を地元の百間川にちなんで百間とした。ここで疑問が生じる。筆名の門のなかは「日」か「月」か。

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