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香港選挙制度の改変 民主社会押し潰す「愛国」

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 中国の全国人民代表大会(全人代)が香港の行政長官や立法会(議会)の選挙制度を大幅に改変する方針を決めた。

 「愛国者による統治」を名目に民主派を排除する狙いで、今後、法制化が進められる。香港に高度な自治を認めた「1国2制度」を形骸化させる措置だ。

 香港の行政長官は選挙委員会を通じた間接選挙で選ばれる。立法会は職能団体別の選挙と直接選挙で定数の半分ずつを選ぶ。

 制度改変では選挙委員会の機能を強化し、行政長官候補の指名と選出のほか、立法会の一部議員の選出も行えるようにする。

 立法会は定数を増やす一方、直接選挙枠を減らす。全面的な直接選挙で行われた2019年の区議会(地方議会)選では民主派が圧勝した。その再現を防ぎ、親中派主導を確実にするための改変だ。

 また、候補者資格審査委員会を新設し、各選挙の候補者が「愛国者」かどうかを厳格に審査する。

 香港では昨年6月末に施行された国家安全維持法で民主派が弾圧され、次々に起訴されている。選挙制度改変で出馬も困難になり、政治活動が完全に封じ込まれる。

 香港基本法は普通選挙の実現を最終的な目標に掲げている。民主派はこの規定を根拠に全面的な直接選挙の実施を求めていたが、その道も閉ざされる。

 李克強首相は「1国2制度を堅持し、香港の長期的な繁栄や安定を保つ」と強弁したが、国際的な理解は得られない。

 19年以降の反中デモは中国が民主主義など普遍的な価値観に背を向けてきたことに一因がある。本来、中国や香港の民主化を求める人々の多くも愛国者のはずだ。

 米英などは香港返還に合意した1984年の中英共同宣言に違反し、中国への信用を失わせると批判している。国際金融都市としての香港の価値は大きく傷ついた。

 中国が強硬姿勢を続ければ、民主主義国と権威主義国家の共存がより困難になる。価値観の異なる二つの陣営が対立する「新冷戦」を招く危険性を自覚すべきだ。

 日本も中国に対し、民主主義や人権の擁護では譲らない姿勢を示す必要がある。透明性や多様性など民主主義の長所を強化し、その優位性を保つ努力も欠かせない。

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