「だいじょうぶ」キャンペーン 東日本大震災から10年 防災を考える

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片田敏孝氏 拡大
片田敏孝氏

 国内最大規模のマグニチュード(M)9・0を記録した東日本大震災から今年で10年を迎えた。この間も、各地で地震や水害など自然災害が発生。そしていま、新型コロナウイルス禍の下、新たな対応を迫られている。東京大学大学院情報学環の片田敏孝特任教授(60)は、「自分の命を守るために最善を尽くす。子どもたちの主体性を育む教育が必要だ」と語る。【明珍美紀】

「生き抜く力」育む 東京大学大学院・片田敏孝特任教授

 「日本の災害対策は『あらがう防災』という考え方に基づいている。自然は人間の力では制御できない。まずは、大人たちが意識を変えなければいけない」と片田教授は指摘する。

 東日本大震災は、最大震度7の大きな揺れに加え、津波が全国の太平洋岸を襲い、甚大な被害をもたらした。震災の教訓を生かし、より被害を減らすための対策を立てることは必要だ。とはいえ、対策を積み重ねれば、被害を免れるわけではない。「自然の脅威にあらがいきれないことを前提に、いざというとき、それぞれが命を守る行動を取れるかどうか。その判断力を培うことが大切になってくる」

釜石の小学生と対話する片田敏孝特任教授。子どもたちの主体性を引き出す授業に取り組んだ=岩手県釜石市内で2006年11月 拡大
釜石の小学生と対話する片田敏孝特任教授。子どもたちの主体性を引き出す授業に取り組んだ=岩手県釜石市内で2006年11月

 片田教授の「生き抜く力」に視点を当てた教育は、震災で生かされた。2006年(当時は群馬大教授)から、岩手県釜石市の小中学生を対象に、「想定にとらわれない」「最善を尽くす」「率先避難者になる」の三つの原則を掲げた防災プログラムを実施した。

 子どもたちに、こう問いかけた。「地震が起きたら、お父さんやお母さんは君たちの場所を捜して迎えにくるよね。でも、もし君たちが一人で逃げることができればどうだろう」と。

 「うちの子は、自分の命を守るための行動ができる」と思えるならば、保護者もそれぞれの命を守ることに力を尽くし、結果的に家族みんなが助かる確率が高くなる。

 子どもたちの主体性、内発性を引き出すことに視点を置いた教育が奏功した。震災時、市内で最も打撃を受けた鵜住居(うのすまい)地区の釜石東中学の生徒たちは地震発生直後、高台をめがけて走り出した。近くの小学校の児童や教師らも後に続いた。「なかには小学生の手を引き、助けながら安全な場所に避難する中学生もいた」という。

 地震はもとより、台風や豪雨など各地で災害が起きている。「これからは、家庭や地域との連携がより重要になってくる」と強調する。例えば家庭で、「地震が起きたら、それぞれがどうするか」を話し合い、お互いの存在を、命のつながりの中で確認する。地域では、幼児や高齢者、障害者など、素早く逃げられない人の命を守るにはどうすればいいかを車座になって考える。

 「核家族化が進んでコミュニティーが崩壊している、と嘆く人がいるが、いまこそ防災を通して地域を再生させるとき」と片田教授。家庭や地域で「育みの環境を」と説く。


 ◆片田特任教授の減災ポイント

防災の第一歩は「備えようとしない自分」を知ること

災害は常に想定外。対処不能の状態での対処を考える

大切な人の命を守ることを互いに考え、信頼し合う


 ■人物略歴

片田敏孝(かただ・としたか)氏

 1960年生まれ。豊橋技術科学大大学院修了。2005年群馬大教授。岩手県釜石市の防災・危機管理アドバイザーとして12年まで8年にわたり市内の小中学校の防災教育に関わる。17年から現職。近著に「人に寄り添う防災」など。====================

簡易エアマットなどを備えた「セコム・スーパーレスキュー」(プラス)=セコム提供 拡大
簡易エアマットなどを備えた「セコム・スーパーレスキュー」(プラス)=セコム提供

プロの視点から備える セコム 05年防災セット開発

防災対策をしている人の備えの内容 拡大
防災対策をしている人の備えの内容

 「セコム」が販売する防災用品セット「スーパーレスキュー」シリーズは、阪神大震災(1995年)や新潟県中越地震(2004年)など、過去に災害を経験した社員らの意見をもとに、実用性と利便性を追求して開発された。

防災対策をしない理由 拡大
防災対策をしない理由

 オリジナルの防災バッグの中身は、保存水や非常食から、手回し充電式ラジオライト、ヘルメットまで「被災直後、数日生き延びられる」ように選んだ実用品。発売は05年で、その後も東日本大震災(11年)、熊本地震(16年)などの災害が発生しているため、継続して利用者や社員の声を検証し改良を重ねている。例えば、発売時、雨具は袖を通すコートタイプだったが、現在は頭からかぶるポンチョタイプ(色は紺)。避難所などで着替える時や簡易トイレを利用する時の目隠しにもなる。

 同シリーズは、「スタンダード」タイプと、防寒具を高性能にし、簡易エアマットを追加するなど機能性を高めた「プラス」の2種類。そのほか、レトルト食品と発熱剤入りの加熱袋をセットにした「ほかほか非常食セット」、ポータブルの蓄電池(大型リチウムイオン電池)などの防災商品もそろえている。

 同社が昨年6月に実施したインターネットによる防災意識調査(20代以上の計500人)では、「防災対策をしている」と答えた人は226人(約45%)。いまなお半数近くが「どのような対策をすればよいか分からない」「費用がかかる」などの理由で、二の足を踏んでいるのが実情だ。

 「スーパーレスキュー」は、いわば「防災のプロ」の視点が入ったものだが、女性であれば基礎化粧品や下着など、自分用のアイテムを足すなど工夫も必要だろう。同社の山吉敬太・ホームマーケット営業本部担当課長は「ご家庭や職場でも非常時の対応について話し合ってみてはいかがでしょう」と提案する。そのときに非常食を試食してみるのもいい。大切なのは、日ごろの備えだ。

 「セコム・スーパーレスキュー」の詳細は同社のホームページで。


災害、リアルに体験 日本科学未来館で4月からイベント

 「相次ぐ自然災害や感染症への対策」をテーマにした「リアル脱出ゲーム」(SCRAP主催)が4月10日から、東京都江東区の日本科学未来館で始まる。

 「リアル脱出ゲーム」は、会場に集まった参加者らが謎解きなどをしながら、ゴールを目指していく。今回のタイトルは「人類滅亡からの脱出」。参加者が新米市長に就任したと想定。ウイルス感染や災害から市民を守るという難問に挑む。日本科学未来館が企画に関わり、防災に関するプロジェクトなどを推進するNPO法人「プラス・アーツ」の永田宏和理事長が監修を手がけた。「科学的な知見とエンターテインメントの要素をかけ合わせた内容」という。

 5月30日までの土曜、日曜、祝日のみ開催(一部期間を除く)。料金は一般前売り3000円、大学生2800円、小中高校生2700円で、当日は各500円増し。予約制でチケットはイベント特設サイトより購入。

日本科学未来会で開かれる「人類滅亡からの脱出」のPR画像=SCRAP提供電子○ビューアー○二次使用不可 拡大
日本科学未来会で開かれる「人類滅亡からの脱出」のPR画像=SCRAP提供電子○ビューアー○二次使用不可

「安心・安全の輪」を大きく

 犯罪や災害、事故などから子どもたちやお年寄りらを守り、「だいじょうぶ?」と声をかけ合える社会を目指す運動で、2007年に始まった。ロゴマークは「行政」「企業・団体」「市民」の三つのリングをかたどり、「安心・安全の輪を大きくしていきたい」との願いを込めている。各地で「地域安全マップ教室」を開くなど、防犯、防災、交通安全の三つを柱に、事業、イベントを展開している。問い合わせは同キャンペーンのホームページ(http://daijyoubu−campaign.com/)で(「だいじょうぶキャンペーン」で検索すると表示される)。


 「だいじょうぶ」キャンペーンホームページ(http://daijyoubu−campaign.com/)または「だいじょうぶキャンペーン」で検索


主催

 「だいじょうぶ」キャンペーン実行委員会(野田健会長=元警視総監、元内閣危機管理監、全日本交通安全協会理事長/事務局 毎日新聞社)

共催

 全国防犯協会連合会、全日本交通安全協会

 日本消防協会、全国防災協会、日本河川協会

 日本道路協会、都市計画協会、全国警備業協会日本防犯設備協会、ラジオ福島、毎日新聞社

後援

 内閣府、警察庁、文部科学省

 国土交通省、消防庁、海上保安庁

 東京都、NHK

協賛

 JR東日本

 セコム

 東京海上日動

 トヨタ自動車

協力

 地域安全マップ協会

 プラス・アーツ

 情報セキュリティ研究所

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