メール1本で途絶えた連絡 養子縁組あっせん事業者が残した難題

  • はてなブックマーク
  • メール
  • 印刷
ベビーライフの説明会で養親希望の女性に配布された資料。「生まれてくる命を大切にしたい」という代表の言葉に共感し、蛍光ペンで印を付けたという。音信不通になり「この理念はうそだったのか」と肩を落とす。
ベビーライフの説明会で養親希望の女性に配布された資料。「生まれてくる命を大切にしたい」という代表の言葉に共感し、蛍光ペンで印を付けたという。音信不通になり「この理念はうそだったのか」と肩を落とす。

 養子縁組のあっせんをする民間事業者の質の向上を目的とした法律が施行されて4月で3年を迎える。従来、都道府県などへの届け出だけで済んだ事業を審査が必要な許可制へと変え、今まで以上に行政が積極的に関わることができる仕組みとなった。ところが昨年夏、東京都による許可の審査を受けていた一般社団法人「ベビーライフ」(文京区)が突然業務を放棄する事態が起きていた。この事業者は、都が求めた帳簿の引き継ぎも完了せずに連絡が途絶えた。事業の「投げ出し」で浮き彫りとなった課題とは。

民間事業者の「特別養子縁組」

 特別養子縁組とは、親元で暮らせない子どもが、安定した家庭を得るための制度だ。実親との法律上の親子関係を終了させ、血縁のない夫婦と新たに親子関係を結ぶ。半年以上の試験養育期間を経て、家庭裁判所が決定する。施設や里親家庭で養育されるのとは違い、子どもは永続的な家庭を得られることから、国は近年、制度の利用を促進。2017年時点で年約500件だった成立件数を22年ごろまでに倍増させる目標を掲げ、20年4月には対象年齢が原則6歳未満から15歳未満に引き上げられた。

 子どもと新しい親をつなぐ「あっせん」業務は、児童相談所と全国20あまりの民間あっせん事業者が行っている。民間の特徴は、「予期しない妊娠」をした生みの親から直接相談を受けて産前産後の支援をする一方で、養親の募集、研修、その後の養育支援なども一貫して行うことだ。運営費の大半が、養親の負担する手数料でまかなわれている。

児童相談所のあっせんは年1~2件程度

 児相の場合、養親の費用負担はないが、一つの児相あたりのあっせん実績は平均で年1~2件(15年度)しかなかった。行政との関わりに抵抗がある生みの親にとっても、居住地を問わず支援が受けられる民間は相談しやすい利点がある。

 民間のあっせんは都道府県や政令指定都市、児相を設置している市が事業者の窓口となり、指導・監督を担う。従来は届け出をするだけで事業を実施できた。しかし、一部の事業者に養親との間で不透明な金銭のやりとりがあることや、生みの親や養親への支援が十分でないあっせんがあることなどが問題視された。

 このため、18年4月に施行された養子縁組あっせん法で許可制となった。あっせん過程の都道府県への報告を義務づけて透明化を確保すると同時に、無許可の事業者や業務改善命令に従わない事業者に罰則を科し、許可を取り消すこともできるようになった。一方で、制度の利用促進のため、国や自治体が許可を受けた事業者に対して財政支援をできるようにした。

 法施行後、許可の基準を満たせないことなどを理由に、複数の事業者がやめている。19年3月には大阪市のNPO法人について、「営利事業を行っている」ことなどを理由に、市が初めて不許可の決定をした。

「連絡が取れない」憤る関係者

 ところが、法施行から2年以上が経過した昨年7月、…

この記事は有料記事です。

残り4145文字(全文5351文字)

あわせて読みたい

注目の特集