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緊急避妊薬の市販、医師はなぜ慎重 若い世代は「簡単に入手」求める

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日本で承認されている先発薬「ノルレボ錠」(左)と、より長時間の効果をうたった海外輸入薬(日本では未承認)=河内敏康撮影
日本で承認されている先発薬「ノルレボ錠」(左)と、より長時間の効果をうたった海外輸入薬(日本では未承認)=河内敏康撮影

 避妊に失敗したり性暴力を受けたりした時に服用する緊急避妊薬(アフターピル)を巡り、当事者の若い世代と医師らの間で意見が分かれている。市販薬化など、より簡単に入手できる方法を求める声が女性を中心に上がる一方、産婦人科医などの団体は慎重な姿勢を崩さない。なぜ考えが折り合わないのか、入手しやすくなることにどんな課題があるのか、それぞれの立場の人たちから話を聞いた。【五味香織/統合デジタル取材センター】

 緊急避妊薬はホルモン剤の一種で、主に排卵を抑制することで妊娠を避ける作用がある錠剤だ。性行為後72時間以内に服用すれば妊娠阻止率は8割程度とされ、早く服用するほど効果が高いとみられる。避妊具が破れるなど避妊に失敗した場合だけでなく、性暴力を受けて妊娠を避けたい女性にとっては「最後のとりで」とされる。

 日本では2社の緊急避妊薬が承認されており、入手するには医療機関の受診が必要となる。健康保険の対象にならない自由診療のため、6000~2万円程度かかる。年末年始などの連休中に受診すると、さらに高額な請求をされることもある。

 性教育に取り組む20~30代を中心とするNPO法人ピルコン(東京都)などの団体は、緊急避妊薬の市販化などの「アクセス改善」を求めて活動している。ピルコンの染矢明日香理事長(35)は「夜間や週末など医療機関が開いていない時は急いでいても入手できない。値段も高い。10代などの若い世代は、そもそも産婦人科を受診することに抵抗を覚える人も多い」と課題を指摘する。

 海外の薬を個人輸入する人もいる。国内の承認薬より安いが、安全性や成分の真偽を確認するのが難しく、健康被害のリスクを伴う。

 一方で欧米には薬局で数千円で入手できたり、18歳以下には無料で提供されていたりする国もあるという。

 染矢さんが共同代表を務める市民グループは2020年10月、緊急避妊薬を薬局で入手できるよう求める要望書と、約10万筆のインターネット署名を田村憲久厚生労働相に提出。20年末に閣議決定された第5次男女共同参画基本計画に、処方箋がなくても薬局で入手できる仕組みを検討することが盛り込まれた。薬剤師の目の前で服用するなどの条件は付いたが、染矢さんは「市民の声で政治を動かせた」と手応えを感じている。

 緊急避妊薬は17年に厚労省の有識者会議で薬局での販売が見送られた。19年にはオンライン診療が認められたものの、処方された後に産婦人科を受診するなどの制約が付いた。いずれも関連の会議で委員の医師から「安易に入手できると乱用につながる」といった慎重な意見が出たためだ。

男性側の避妊怠る懸念

 なぜ医師らはアクセス改善に否定的なのだろうか。

 日本産婦人科医会の前田津紀夫副会長は、…

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