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和解のために 2021

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慰安婦問題の罪を「日本」「国家」だけに集中させた判決の問題点

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インタビューに答える朴裕河韓国世宗大教授=東京都新宿区で2020年3月6日、宮本明登撮影
インタビューに答える朴裕河韓国世宗大教授=東京都新宿区で2020年3月6日、宮本明登撮影

 日本政府に元慰安婦らへの賠償を命じたソウル中央地裁判決は、国家には他国の裁判権が及ばないとする国際法上の「主権免除」の原則を認めなかった。慰安婦問題を「計画的、組織的に行われた犯罪行為」と認定し、基本的価値の侵害などいかなる逸脱も許されない「強行規範」と捉えた。韓国・世宗大の朴裕河(パク・ユハ)教授は、この判決の背後には、戦前の日本と朝鮮を「交戦国」同士とみなす法的論理があると指摘する。「日本の国家犯罪」を立証しようとする韓国司法の動きをどう考えるべきなのだろうか。

日本と朝鮮を「交戦国」だったとみなす論理

 1月8日に下されたソウル中央地裁の判決文は、国家の管理責任を問うてもいる。詳しい内容は省略するが、先に述べたような、日本と朝鮮の関係を「交戦国」とみなすことのほかに、「私人」の行為であっても「国家の責任」として問える論理を用意しているのである。例えば、軍人が民間人に対して強姦(ごうかん)や虐殺をした場合、戦争犯罪として裁くことを可能にするには、その関係が「交戦国」同士でなければならなかった。

 慰安婦問題をめぐって関係者が処罰された例としてよく挙げられるオランダ人女性に強制売春させた軍人を処罰した例は、日本とオランダが交戦国同士だから可能だったのである。1月8日の慰安婦訴訟の判決が、最終的には朝鮮と日本の関係を「占領」関係――「交戦国」同士とみなしているのも、まさにそのためと言えるだろう。

 そして今回の判決は、1990年代初めに過去の清算を目指した支援者たちが30年にわたって行動し、考えながら作り上げてきた論理が奏功したものと言っていい。言い換えれば、慰安婦の被害が一様ではないこと、必ずしも「強制連行」に当たらない場合が多いことを認識しながら、ともかくも日本が主体となった「不法行為」であったことを証明するための「法的論理」が作られてきた、ここ30年の運動の結果でもあったのである。

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