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東海第2原発差し止め 住民避難の「虚構」を指弾

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 茨城県の日本原子力発電東海第2原発に対し、水戸地裁が運転差し止めを命じる判決を出した。

 重大事故が起きた場合に備えて実効性のある避難計画が整えられておらず、周辺住民の安全が確保されていないと認定した。

 避難計画の不備だけを理由に、原発の運転を禁止する司法判断は初めてだ。

 原発の安全性に絶対はない。重大事故が起きれば被害は広範囲に及び、周辺住民の避難も困難を極める。10年前の福島第1原発事故は、その現実を示した。

 国際原子力機関は原発に5層の安全対策を課しており、最後の備えとして避難計画がある。現在、原発から30キロ圏内に位置する自治体が策定を求められている。

 東海第2原発は首都圏唯一の原発で、現在は運転停止中だ。30キロ圏内には、全国で最も多い約94万人が住んでいる。

 圏内14市町村のうち、人口約27万の水戸市など9自治体は、避難計画の策定に至っていない。

 判決は、茨城県と残る5自治体の避難計画についても、道路が寸断された場合を想定した複数の避難経路が設定されていないなど、不十分だと指摘した。

 避難対象者が多いため、受け入れ先の自治体との調整や、移動手段の確保に手間がかかる。避難計画をつくること自体が、そもそも難しい。

 判決は、他の原発にも影響を及ぼす可能性がある。

 既に再稼働したり、手続きが進んだりしている原発でも、避難経路や輸送体制が限られ、避難計画の実効性が疑問視されている。

 原発事業者の責任も重くなる。避難計画を策定する主体は自治体だが、これまでより踏み込んで関与していく必要が出てくる。

 避難計画は原子力規制委員会の審査対象になっていない。原発そのものの安全対策にお墨付きが与えられたとしても、いざという時の避難計画が十分でなければ、周辺住民の不安は消えない。

 福島第1原発事故以降で、原発の運転を認めない司法判断は8件目だ。裁判所の目は厳しくなりつつある。

 国は、真摯(しんし)に指摘を受け止め、「脱原発」に向けて政策を見直すべきだ。

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