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スポーツで「好サイクル」を 川勝平太知事×室伏広治長官

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オンラインで約1時間にわたってスポーツ振興について語り合い、笑顔で手を振る静岡県の川勝平太知事(左)とスポーツ庁の室伏広治長官
オンラインで約1時間にわたってスポーツ振興について語り合い、笑顔で手を振る静岡県の川勝平太知事(左)とスポーツ庁の室伏広治長官

 新型コロナウイルスの影響で生活が変化する中、スポーツはどんな役割を果たせるのか。自転車競技やラグビーの「聖地」づくりに取り組む静岡県の川勝平太知事(72)と、スポーツを通じた健康づくりに力を注ぐスポーツ庁の室伏広治長官(46)がオンライン会議システム「Zoom(ズーム)」で、スポーツの魅力や効果について意見を交わした。【構成・小林悠太】

 川勝知事 静岡県沼津市出身の室伏長官は静岡が生んだヒーローであり、県の誇りです。昨年秋にスポーツ庁長官に就任し、日本のスポーツ界を明るい方向に変えていくと期待しており、対談をお願いしました。

 室伏長官 父(陸上男子ハンマー投げで五輪代表4回の重信さん)が日大の三島キャンパスで教員をしていて、幼少期を静岡で過ごしました。今も親戚が多く暮らしているので、毎年静岡に帰っています。海、山と自然に恵まれていて、運動するには最適な地域です。

スポーツ庁の室伏広治長官とオンラインで語り合う静岡県の川勝平太知事=静岡市の静岡県庁で2021年2月22日午前10時41分、古川幸奈撮影 拡大
スポーツ庁の室伏広治長官とオンラインで語り合う静岡県の川勝平太知事=静岡市の静岡県庁で2021年2月22日午前10時41分、古川幸奈撮影

 川勝知事 静岡は冬でも暖かく、体を動かしやすい気候です。現在の日本の教育では英語や国語、数学など主要5科目の偏差値を重視する風潮がありますが、スポーツは人間を形成する上で大切なことの一つだと思っています。県としてスポーツ文化を根付かせる取り組みを進め、スポーツの大切さを発信していきます。

 室伏長官 スポーツは自分が主体的に立ち上がらないとできません。毎日、地道に続けていくことで過去の自分を乗り越えることができます。大人になってから始めたとしても決して遅いことはなく、軽めのウオーキングも立派な運動です。激しいものだけがスポーツではありません。自分のできるペースで続けていくことが大切です。

 川勝知事 コロナ禍で、多くのスポーツイベントが中止や延期、縮小されました。病気と医療はスポーツと深く関わっています。感染症は年齢や職業に関係なく、誰にでも襲いかかってきます。長官はスポーツと医学について、どのように考えていますか。

 室伏長官 日常的に運動している人の方が、健康である可能性は高いと言われています。スポーツ庁は成人のスポーツ実施率について、週1日以上が65%程度(2020年度は59・9%)になることを目標に掲げています。実現すれば医療費の削減にもつながります。

 課題は運動する習慣のない人に対し、どのようにスポーツの魅力を伝えるかです。人は楽しみを感じられないと、続けられません。景色を見ながら楽しくできる自転車は、運動習慣のない人にもおすすめのスポーツの一つです。静岡県が地の利を生かして自転車などのスポーツ振興に取り組んでいることは、本当にありがたいです。

コロナ禍で「自転車文化を県全体に」

 川勝知事 静岡県は東京オリンピック・パラリンピックで自転車競技の会場となっています。五輪ではトラックが伊豆ベロドローム(伊豆市)、マウンテンバイクが伊豆MTBコース(同)、ロードレースのフィニッシュ地点は富士スピードウェイ(小山町)となります。会場に選ばれた以上、最大のおもてなしができるように準備を進めています。

 コロナで1年延期となった後、会場周辺の道路整備だけでなく、サイクリング途中に自転車のメンテナンスなどを行える「バイシクルピット」を増設するなど、自転車文化を県全体に広められるように取り組んでいます。

 室伏長官 (五輪の競技会場に関しては)東京から多少距離があっても経費を抑えられるため、東京都外の既存施設を積極的に活用することになり、自転車の会場が静岡県へ変更されました。会場が東京だけでなくオールジャパンとなったことで、静岡を含めていろいろな都市へ注目が集まっていることは良いことだと思います。

 元々、静岡県には、ベロドロームや隣接する日本サイクルスポーツセンターがあり、「自転車の県」と呼ぶにふさわしい場所でした。サイクル文化が根付いていくことを期待しています。

 川勝知事 今夏以降は、関係者と連携して伊豆の施設を初心者からトップ選手まで利用できる「自転車トレーニングビレッジ」として、拠点化することを考えています。競技力向上のための整備だけでなく、世代や障害にかかわらず、多くの人が自転車に親しみ、体験できる場所にしていきます。

静岡県の川勝平太知事とスポーツを活用した健康増進について意見を交わすスポーツ庁の室伏広治長官=東京都のスポーツ庁長官室で2021年2月22日午前11時8分、山田茂雄撮影 拡大
静岡県の川勝平太知事とスポーツを活用した健康増進について意見を交わすスポーツ庁の室伏広治長官=東京都のスポーツ庁長官室で2021年2月22日午前11時8分、山田茂雄撮影

 また、「アジアの鉄人」と呼ばれた名選手である父の背中を見て育った長官が世界的な選手になったことからも分かる通り、子どもの時にトップ選手を生で見る体験は、その後に大きな影響を与えます。ここ数年の間に静岡県内では、オリンピックを契機に二つのプロの自転車チームが活動を開始しました。これも大きなレガシー(遺産)となります。

 室伏長官 スポーツ庁では、自治体や民間企業などが連携し、スポーツと地域の資源を組み合わせて地域活性化につなげる「地域スポーツコミッション」の活動を支援しています。現在は全国約160の地域で活動が進んでおり、スポーツ振興と健康増進の両方の観点で重要だと思っています。ぜひ、今夏以降の継続的な取り組みをお願いします。

ラグビーW杯のレガシーを

 川勝知事 19年ラグビー・ワールドカップ(W杯)でも小笠山総合運動公園内のエコパスタジアム(袋井市)が会場になり、日本が強豪のアイルランドを破った試合を含めて4試合が行われました。日本対アイルランド戦は「シズオカショック」と呼ばれ、人々の印象に残りました。

ラグビーW杯で強豪のアイルランドを破った日本代表。会場となった静岡・エコパスタジアムは熱狂に包まれた=2019年9月28日、竹内紀臣撮影 拡大
ラグビーW杯で強豪のアイルランドを破った日本代表。会場となった静岡・エコパスタジアムは熱狂に包まれた=2019年9月28日、竹内紀臣撮影

 ラグビーW杯のレガシーを残すため、新たに公園内の芝生広場3面にラグビーのゴールを整備し、計5面を使用できるようにしました。今後このグラウンドを活用し、合宿や大会の誘致を積極的に行ってまいります。また、昨年9月、スタジアム前の広場に(アイルランド戦での)福岡堅樹選手の逆転トライシーンをモチーフにしたブロンズ像を設置しました。除幕式に出席したアイルランドの駐日大使からは「あの試合で日本との友情が高まった」との言葉をもらい、感激しました。

 室伏長官 ラグビーのノーサイドの精神であり、試合後には互いをリスペクトする。そこには特別な友情が生まれてきます。スポーツにはそういう学びもあるという良い例だと思います。

 川勝知事 五輪は人類の平和の祭典です。その一翼を静岡県が担えることは本当に幸せです。アスリートはコロナ禍の苦しい思いを克服して大会に出てきます。開催県として、コロナ禍での大会をできる限り支えて、頑張った選手たちをたたえたいと思っています。

2004年アテネ五輪の陸上男子ハンマー投げで金メダルを獲得した室伏広治さん(現スポーツ庁長官)の投てき=代表撮影 拡大
2004年アテネ五輪の陸上男子ハンマー投げで金メダルを獲得した室伏広治さん(現スポーツ庁長官)の投てき=代表撮影

 室伏長官 五輪出場を通じて、感謝の思いを表したいと思っている選手はたくさんいます。選手も競技だけすればいいわけでなく、レガシーも含めた社会貢献が必要です。

 川勝知事 選手たちが感謝や社会貢献を思っているということは、スポーツによって人が育つということを表しています。スポーツの大会は、「する」「見る」「支える」と、関係するすべての人を感動に包みます。今夏の祭典を関係者の皆さんと作り上げていきます。よろしくお願いします。

 室伏長官 東京五輪・パラリンピックの招致後、障害者スポーツの普及が進むなど効果も見え始めています。今夏の大会は地域のスポーツ振興も含めて、日本が変わっていくチャンスです。大会の成功へ向け、一緒に頑張っていきましょう。

かわかつ・へいた

 京都市出身。早稲田大、早大大学院を経て英オックスフォード大で博士号取得。早大教授、国際日本文化研究センター教授、静岡文化芸術大学長などを経て2009年より現職。現在3期目。中学時代はバスケットボール部に所属していた。

むろふし・こうじ

 静岡県沼津市出身。2004年アテネ五輪の陸上男子ハンマー投げで投てき種目ではアジア勢初の金メダルに輝いた。五輪4大会連続出場の12年ロンドン五輪では銅メダルを獲得。14年に東京医科歯科大教授に就任。同年6月から東京五輪・パラリンピック組織委員会のスポーツディレクターを務め、20年10月に第2代スポーツ庁長官に就任した。

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