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五輪関係者と人権 差別と気づかない深刻さ

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 今夏に開催が予定される東京オリンピック・パラリンピックをめぐり、大会関係者の差別的言動がまたも表面化した。

 開閉会式の演出を担当するクリエーティブディレクターの佐々木宏氏が、人気タレントの渡辺直美さんの容姿を侮辱するようなアイデアを提案していたという。

 無料通信アプリ「LINE」を使った演出チーム内でのやりとりだった。女性に対して不適切だなどと反対意見が相次ぎ、アイデアは撤回された。

 昨年3月の出来事だったが、週刊誌報道で問題が発覚し佐々木氏は総合統括のポストを辞任した。

 容姿で人をからかう行為は「ルッキズム」と呼ばれ、差別に当たる。人権意識の欠落は明らかだ。謝罪文で佐々木氏は「私が調子に乗って出したアイデアです」と述べた。その言葉通り、差別の認識がなかったとすれば逆に深刻だ。

 東京大会は「多様性と調和」を理念に掲げる。とりわけ、開閉会式は五輪やパラリンピックの素晴らしさとともに、日本としての価値観を世界に発信する場であるはずだ。佐々木氏がそれを理解していたとは思えない。

 佐々木氏は広告代理店、電通の出身で、2016年リオデジャネイロ五輪では、人気ゲームのキャラクターに扮(ふん)した安倍晋三首相(当時)を閉会式に登場させる演出を手がけた。

 演出チーム内ではトップの立場をめぐる不協和音もささやかれていた。当初は狂言師の野村萬斎氏が総合統括だったが、昨年12月にチームは解散し、代わって佐々木氏が就任した経緯がある。

 残り約4カ月で演出プランの大幅な変更は難しいとしても、大会の理念を実現できるよう、体制を立て直さなければならない。

 大会組織委員会では、森喜朗氏が女性蔑視発言で会長を引責辞任したばかりだ。

 今回の問題について、渡辺さんは「それぞれの個性や考え方を尊重し、認め合える、楽しく豊かな世界を心より願う」とコメントした。東京大会が取り組むべき姿がそこに見えるのではないか。

 新型コロナウイルスの感染拡大で自由な交流が制限される中、人々をどう結びつけるか。大会の本質が問われている。

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