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梅津時比古・特別編集委員の「コンサート」にまつわるエッセー。

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二期会《タンホイザー》 救済なき救済=梅津時比古

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=堀田力丸撮影
=堀田力丸撮影

 「純愛」の考え方は時代に連れて変わる。歴史的には「純愛」は精神的な愛に位置づけられてきた。対するは官能的な肉欲。これには歴史的な強弁の経緯がある。古代ギリシャでは、社会の指導者の少年愛が問題にされた。それに関し、哲学者が、少年との愛は、少年による知への憧れがもたらす知的な上昇志向によるもの、といわば肉欲を知的志向へすり替えたのである。結果として、肉体的な愛が下位、精神的な愛が上位とする構造が形作られた。この二分はキリスト教が肉体と信心を峻別(しゅんべつ)することで、徹底された。

 ワーグナーの楽劇《タンホイザー》は、快楽を呼ぶ肉体的な愛と、信仰に通じる精神的な愛の対立、葛藤を描いている。主人公の騎士、タンホイザーが、官能的な女性・ヴェーヌスの世界と信心深いエリーザベトの世界の双方に没入する姿が第1幕と第2幕で描き分けられる。

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