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英国の核戦力増強計画 軍拡競争の愚を犯すのか

 英政府が東西冷戦終結後、初めて核戦力を増強する方針を表明した。「核なき世界」を求める国際世論に逆行する政策だ。

 外交・安全保障を包括的に見直す「統合レビュー」で打ち出された。核弾頭保有数の上限を現在の180発から260発にまで引き上げる。

 インド太平洋地域で戦略的な関与を強めていくことも決めた。

 英国は1952年、米ソに続く3番目の核保有国になった。旧ソ連(現ロシア)の核に対抗することが目的で、冷戦期には約500発の核弾頭を保有していた。

 91年にソ連が崩壊したことに伴い欧州の安全保障環境は激変した。英国は98年から核弾頭数の削減に乗りだし、2010年に225発だった上限を20年代半ばまでに180発とすることを決めた。

 増強へ方針を転換した背景には、14年にロシアがウクライナ領クリミアを一方的に編入したことや、中国が近年、海洋進出の動きを強めていることがある。

 英国は昨年、欧州連合(EU)から離脱し、外交・安全保障面での存在感を欧州域外にも広げる「グローバルブリテン」構想を掲げている。核戦力の増強もその一環である。

 核拡散防止条約(NPT)は米国、ロシア、英国、フランス、中国の5カ国に核兵器の保有を認める一方、核軍縮交渉をするよう求めている。

 英国の新政策は核保有の特権だけを享受し、軍縮義務を放棄している。他の保有国を刺激し、軍拡競争を招く懸念もある。

 さらに、イランなど非保有国に核を持つ口実を与えかねない。NPT体制が崩壊した場合、核兵器の使用がこれまで以上に現実問題となる危険がある。

 核兵器の開発や保有、使用を禁じる核兵器禁止条約が今年1月に発効した。核のない世界を求める声は一層高まっている。

 新型コロナウイルスの感染拡大で昨年延期されたNPT再検討会議が今夏、開催される。核保有国は義務に背を向けず、軍縮に乗り出さなければならない。

 日本は核兵器の非人道性を身をもって知る戦争被爆国である。政府は英国に抗議し、保有国に核軍縮を促すべきだ。

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