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常夏通信

その86 戦没者遺骨の戦後史(32) あまりにずさんな遺骨収容の実態

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ソ連に抑留され亡くなった日本人の墓参をする人たち=1990年8月
ソ連に抑留され亡くなった日本人の墓参をする人たち=1990年8月

 「この人たちは、本当に日本人の遺骨を日本に取り戻すという気持ちをもっていたんだろうか」。その報告書を見て、私はそう思った。「『すべてが日本人の遺骨ではないかもしれない』。現地で収容に当たった厚生労働省の担当者の中には、そう感じる人はいなかったのだろうか」とも。

 本連載その85で見た通り、2019年夏、ロシアで厚労省がシベリア抑留で亡くなった「日本人」として収容し日本に移した遺骨の多くが、日本人ではなかったことが分かった。悪意はなかったとしても他国、他民族の墓を荒らしてしまったのだ。墓を間違えること自体は、やむを得ない面もある。しかしDNA鑑定の専門家が繰り返し「日本人ではない可能性がある」と指摘したにもかかわらず、厚労省はそれを事実上無視した。なぜそんなことになったのか。

 厚労省は第三者による検証を余儀なくされた。たとえば「戦没者遺骨の所属集団の鑑定及び鑑定方法の検討等に関する専門技術チーム」だ。法医学や人類学の専門家、遺族代表ら10人がメンバーで、「DNA鑑定班」(6人)と「収集手順班」(4人)からなる。

 同チームによる報告書は20年3月25日に発表された。「DNA鑑定班」の調査によれば、…

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