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偽りの共生

極めて低い難民認定率、海外からも批判される入管施設での長期収容など、日本にいる外国人への対応には問題が山積しています。国が掲げる「多文化共生」の内実を問います。

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名古屋入管スリランカ人死亡 上川法相「4月上旬にも調査結果」

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名古屋入管に収容されていたスリランカ人女性から送られてきた年賀状。自作の切り絵イラストがあしらわれていた=支援団体「START」提供(画像の一部を加工しています) 拡大
名古屋入管に収容されていたスリランカ人女性から送られてきた年賀状。自作の切り絵イラストがあしらわれていた=支援団体「START」提供(画像の一部を加工しています)

 30代のスリランカ人女性が名古屋出入国在留管理局で収容中の3月6日に死亡した問題について、上川陽子法相は24日、参院予算委員会で女性死亡の経緯の調査結果について「来月上旬ごろに明らかにすると報告を受けている」と明らかにした。石川大我議員(立憲民主)の質問に答えた。また、茂木敏充外相はこの問題で杉山明・駐スリランカ日本大使が同国のグナワルダナ外相と面会したと述べた。【和田浩明/統合デジタル取材センター】

出入国在留管理庁次長「司法手続きも進行中」

 上川氏は女性の死の経緯について調査する方針を表明しており、参院予算委で石川氏が調査の進行状況や完了時期を質問。上川氏は「来月上旬ごろの時期を目標に、健康状態の推移や診療経過などをある程度まとまった形で明らかにすることを考えていると報告を受けている」と説明した。それ以前でも、明らかにできる事実は「できうる限り公表したい」とも述べた。

 上川氏によると、調査チームは出入国在留管理庁が設置し、検察官の身分を持つ職員も参加して関係者から聞き取りなどを行っているが、外部メンバーの参加も求めるよう指示したという。

 また「警察の捜査が入っているのか」との石川氏の質問に対し、松本裕・出入国在留管理庁次長は「施設内の死亡事案ということで、司法手続きも進行中だ」と答弁した。

 一方、スリランカのメディアがグナワルダナ氏が杉山氏と面会し、女性の死について話したと報じており、この点についての石川氏の質問に、茂木氏は面会を認め「本件調査に言及があったと聞いた」と答弁したが、具体的な会談内容は「外交上のやりとり」として言及を避けた。

 女性の遺族は日本での葬儀を希望しているとの現地メディアの報道もある。茂木氏は「日本での葬儀を希望される場合は、人道的観点を含め外務省として適切な対応をしたい」と答弁。上川氏は「ご遺族は(死亡したのが)他国の地ということで大変苦しい思いをしていらっしゃると思う。最大の支援をしたい」と述べた。

女性が名古屋入管に提出した仮放免許可申請の内容=支援団体「START」の松井保憲さん提供 拡大
女性が名古屋入管に提出した仮放免許可申請の内容=支援団体「START」の松井保憲さん提供

 このスリランカ人女性は不法滞在のため2020年8月に名古屋入管に収容された。今年1月下旬から嘔吐(おうと)などを訴え、施設内の医師や外部の病院で診察を受け「食道炎のような症状」があるとの診断が出ていた。その後、急激な体重減少や歩行困難に陥るなど衰弱。死の3日前に面会した支援者は、生命の危険があるとして即時入院などの対応を入管側に申し入れていた。女性は3月6日午後に居室内で倒れているのが発見され、病院に緊急搬送されたが、死亡が確認された。

茨城・牛久入管で収容者がハンスト

 一方、石川氏は24日の質疑で、茨城県牛久市の東日本入国管理センターの収容者から23日夜に電話があり、収容中の外国人8人がハンガーストライキ中で体重が20~30キロ以上も減少したとの訴えがあると述べた。その上で「このままだとまた死者が出るのでは」と懸念を示して法務省・入管側の対応を促した。

 松本氏は複数の収容者がハンスト中であることを認め「職員が面接して原因把握に努め、生命・健康に危険を及ぼすことを説得する。健康状態等を踏まえ(一時的に収容を解く)仮放免の可否の判断を個別に行う」と説明。上川法相は「健康管理など適切な処遇を徹底するよう指示した」と強調した。

 入管施設では収容者が長期収容などに抗議してハンストを行い、結果として健康を損ねる事例が相次いでいる。長崎県大村市の大村入国管理センターで約3年間収容されていたナイジェリア人男性が19年6月にハンストの末に「飢餓死」したとの調査報告書を、出入国在留管理庁は公表している。同庁は男性が食事や治療を拒んだうえ、強制治療も難しく、「不相当だったとは言えない」対応だったと結論づけた。

 収容期間が半年を超える収容者は、20年6月末で527人中232人で4割を超える。3年を超えて収容されている人も47人だ。長期収容の中で肉体的、精神的な健康問題を抱える人も少なくない。国連人権理事会の恣意(しい)的拘禁作業部会は20年秋に、現状は「人権侵害で国際法違反」と指摘している。

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