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第103回全国高校野球選手権

第103回全国高校野球選手権大会(8月10~29日)の特集サイトです。

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センバツ2021 敦賀気比、粘りみせた 4点差追いついたが… /福井

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タイブレークの末惜敗し、引き揚げる敦賀気比の選手たち=兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で、藤井達也撮影
タイブレークの末惜敗し、引き揚げる敦賀気比の選手たち=兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で、藤井達也撮影

 第93回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高野連主催)で敦賀気比は大会第5日の24日、1回戦で常総学院(茨城)と対戦した。序盤にリードを許す苦しい展開だったが、終盤には持ち味の粘り強さを発揮し追いついた。試合は大会史上初のタイブレークに突入したが、惜しくも5―9で敗れた。2度目のセンバツ制覇の夢はかなわなかったが、コロナ禍の中で応援に駆け付けた保護者らから大きな拍手が送られた。【大原翔、広瀬晃子、荻野公一】

 先発の竹松明良投手(3年)は「大舞台で緊張があった」と、序盤から球速が上がらず、制球も乱れた。二回に先制点を許し、この回4失点。父裕二さん(48)は「目指してきた舞台だけに悔しいだろう。味方が逆転してくれると信じたい」と見守った。

 四回途中からは公式戦初登板の本田克選手(3年)と上加世田頼希選手(2年)が相手打線を抑えた。本田選手は「いつでも行けるよう監督から指示されていたので、準備はできていた。終盤はしんどかったが気持ちで投げた」と振り返る。

七回裏に東の犠飛で1点差に追い上げ、沸く敦賀気比のアルプススタンド=兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で、大原翔撮影 拡大
七回裏に東の犠飛で1点差に追い上げ、沸く敦賀気比のアルプススタンド=兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で、大原翔撮影

 敦賀気比の反撃が始まったのは七回。本田選手のバントが相手の悪送球を誘い、1点を返した。その後、渡辺飛雄馬選手(3年)の内野ゴロと東鉄心選手(同)の犠飛で2点を返した。昨秋の公式戦でも見せた粘り強さを発揮する選手たちに観客はこの日一番の大歓声を送った。東選手の父万人さん(42)は「まだ追う展開なので頑張ってほしい」と応援していた。

 八回表に2点差に広げられたが、その裏の攻撃では小西奏思選手(3年)の犠飛で1点差とすると、本田選手が右前に適時打を放ち、ついに同点に追いついた。スタンドで雄たけびを上げた父達弥さん(48)は「甲子園で大きな仕事をしてくれて感無量だ」と喜んだ。

 しかし、勝ち越すまでには至らず、試合は延長十三回からタイブレークへ。表に4点を許し、5―9で惜しくも敗れた。だが、負けムードだった試合で持ち前のしぶとさを見せつけた選手たちに、保護者らは大きな拍手を送った。大島正樹主将(3年)の母香織さん(48)は「粘りを見せてくれると信じていた。こんな試合を見せてくれて本当にうれしい。ありがとう」と涙を流した。

千羽鶴約4000羽に先輩の代の思い

千羽鶴を手に持つ父母会の現会長の今井陽平さん(左)と前会長の岩本政喜さん=兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で、広瀬晃子撮影 拡大
千羽鶴を手に持つ父母会の現会長の今井陽平さん(左)と前会長の岩本政喜さん=兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で、広瀬晃子撮影

 ○…アルプススタンドには、色とりどりの折り鶴約4000羽で直径約60センチの輪をかたどるなどした千羽鶴が飾られた。昨夏の県独自大会で優勝した当時の3年生の父母会が作ったが、新型コロナの影響で夏の選手権は中止に。「甲子園出場」がかなわず、父母会前会長の岩本政喜さん(49)が「新チームに甲子園まで連れて行ってほしい」と現会長の今井陽平さん(45)に託していた。応援席で岩本さんは「願いを実現してくれて感無量。現チームの選手たちを誇りに思う」と喜び、今井さんは「先輩たちの思いを背負い、伸び伸びと思い切ったプレーをしてほしい」と話していた。


ペンダントに遺骨、祖父にささげた雄姿 沼田航選手(3年)

打席に立つ敦賀気比の沼田航選手=兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で、吉田航太撮影 拡大
打席に立つ敦賀気比の沼田航選手=兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で、吉田航太撮影
征男さんの遺骨が入ったペンダント。征男さんが好きだった言葉「清く正しく美しく」が刻まれている=福井県敦賀市の市総合運動公園野球場で、大原翔撮影 拡大
征男さんの遺骨が入ったペンダント。征男さんが好きだった言葉「清く正しく美しく」が刻まれている=福井県敦賀市の市総合運動公園野球場で、大原翔撮影

 沼田航選手(3年)は祖父征男さんのことを思い浮かべながら、甲子園の舞台に立った。小学生の時から沼田選手に野球を教えていた征男さんは孫が甲子園に出場するのを楽しみにしていたが、昨年11月に病気で亡くなった。「天国の祖父に活躍する姿を見せたい」。24日の試合にはスタメンで出場し、雄姿を亡き祖父にささげた。

 福島県白河市に住んでいた征男さんは、沼田選手が暮らす神戸まで遊びにいき、小学生の頃から公園でよく一緒に野球の練習をした。その時によく言われたのが、「継続は力なり。雨の日も風の日もバットを振り続けろ」という言葉だ。敦賀気比に入学後もその言葉は常に心の中にあり、こつこつと練習を続けた。その結果、1年生の秋の県大会で初めてレギュラー入り。「小さなときには漠然としか理解できなかったが、守ってきてよかった」と話す。

 征男さんは宮崎や和歌山など県外の試合でも妻里美さん(73)と一緒に応援に駆け付けた。沼田選手がベンチ入りした2019年秋の北信越大会を観戦するなど甲子園出場を目指す孫の活躍を喜んでいた。だが20年6月に十二指腸がんが見つかり、優勝した昨秋の北信越大会を見ることができず、同年11月に亡くなった。

 葬儀後、沼田選手は自分で買ったペンダントに征男さんの遺骨を入れ、試合や練習の時以外はいつもお守りとして身に着けている。「祖父の存在が今の自分を作った」という思いがあるからだ。

 この日の試合では快音は聞かれず、「緊張で序盤は足が震えた。九回裏の打席では『天国で祖父が見守ってくれている』と奮い立ったが、うまくやれなかった」と悔しがった。それでも「夏に甲子園に戻ってきて、日本一の目標を達成したい」と前を向いた。【大原翔】


常総学院(茨城)

  0400000100004=9

  0000003200000=5

敦賀気比

 (延長十三回、十三回からタイブレーク)

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